一級建築士の資格は建物の設計以外に活用できる?資格を活かせる意外な仕事とは

公開日:2022/09/01   最終更新日:2024/06/19

終身雇用が崩壊し、転職が当たり前となりつつある昨今では、転職を視野に入れている、一級建築士の方も多いのではないでしょうか。実は、設計意外にも一級建築士が求められる仕事は、たくさん存在するのです。この記事では、一級建築士の資格を生かせる、意外な仕事や建築士の転職活動のコツなどについて紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

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一級建築士の仕事の幅は広い

一級建築士の仕事は幅広く、資格を生かせる働き先は多岐にわたります。その理由について、建築士資格の概要や、二級建築士との違いにも触れながら見ていきましょう。

建築士資格でできること

国家資格である建築士は、建物を建築するための「設計」と「工事監理」が独占業務だとされています。設計は建築工事のために、必要な図面や仕様書を作成すること、工事監理は設計図書のとおりに実際の工事が、実施されているかを確認することを指します。建築士による設計と工事監理が、適切に行われてはじめて建物が完成するため、建築士はすべての建物にとって欠かせない重要な存在なのです。

一級建築士はどんな建物でも扱える

扱う建物の規模や構造、用途などによって制限がある二級建築士に比べて、一級建築士には制限がなく、すべての建物を扱うことができます。個人の住宅から大規模マンション、大型商業施設、超高層ビルまで、どんな建物でも制限を受けることなく、設計及び工事監理を行うことができるのです。 そのため、建築のスペシャリストである、一級建築士の資格を生かせる仕事は、設計や工事監理のみにとどまらず、幅広い業界・職種で必要とされています。一見建築のイメージとは、かけ離れた分野で活躍している一級建築士も多く、設計に限定せず、より広い視野で働き方を検討できるという点も魅力でしょう。

多くの有資格者に選ばれている転職先

転職先にかなり幅広い選択肢がある建築士ですが、どのようなところが選ばれているのでしょうか。多くの有資格者が、転職している代表的な企業を紹介します。

ゼネコン

ゼネコンは建築士の代表的な職場のひとつだといえるでしょう。大手・準大手・中堅・中小など規模はさまざまですが、建築士はゼネコンにとって必要不可欠な存在です。業務内容としては、営業所や工事現場に常駐して、工事監理や現場管理を行なうことが多く、設計部などで設計業務を行える建築士の割合は少なめです。規模が大きなゼネコンになるほど、在籍している建築士の数も多く、転職が難しい傾向にあります。

設計事務所

設計業務を中心に手がけたいと考える建築士なら、設計事務所への転職を希望する人も多いのではないでしょうか。設計事務所には、建築家が運営する比較的小規模な「アトリエ系設計事務所」と中規模以上の事業系物件を扱う「組織系設計事務所」の2種類があります。 そのなかでも「意匠設計」「構造設計」「設備設計」など、細かい設計分野に分かれており、より得意分野に近い仕事を探して、設計事務所を移りながらキャリアチェンジを図る建築士も多くいます。組織系設計事務所では各設計部門に配属され、担当業務を中心に行うことが多く、アトリエ系設計事務所では、意匠設計をメインに行うことが一般的です。分業体制が整っており、業務範囲が決まっている組織系設計事務所に対し、小規模なアトリエ系設計事務所では、一人当たりの業務範囲が広い傾向にあります。

ハウスメーカー

戸建て住宅を売買するハウスメーカーも、建築士の需要が高い企業です。住宅のプランニングから設計・開発、購入者との商談まで行うため、より幅広い経験が積める働き先だといえるでしょう。顧客のライフスタイルまで、考慮した設計やコミュニケーション能力も求められる仕事です。

設計以外にどんな仕事ができるのか

続いて紹介するのは、設計とは少し離れた分野の仕事です。意外に感じられるかもしれませんが、一級建築士の資格は、次のような仕事でも生かすことができます。

公務員

建築士の資格は、各自治体における公共建築物の施工・維持管理、建築確認申請の受付業務など、公務員としての仕事にも生かせます。基本的には書類のチェックや現場の確認がメインで、設計を手がけることはありません。市役所や町役場が勤務先となるため、残業が少ないなど、比較的労働環境が良いという点が、公務員の大きなメリットでしょう。

調達・購買管理

マンションやビルなど、比較的規模の大きな建築物を扱う企業では、建材や設備の仕入れ・在庫管理・単価交渉などを専門に行う部門を設けている場合があります。大手の建設業やディベロッパーでは、一級建築士の資格を必須条件にしているケースもあり、資格と現場経験を存分に生かせる仕事だといえるでしょう。 素材や建材が用途に適しているかを判断したり、市場調査をしながら価格交渉をしたりと、営業職にも近い職種のため、交渉力やコミュニケーション能力が求められます。建築士資格を生かして、大企業に転職をしたいという方におすすめの職種です。

不動産

最近注目されているのが、中古物件をリフォーム・リノベーションして、再流通させる不動産売買です。中古物件の流通に欠かせないのが、住宅診断(ホームインスペクション)ですが、不動産業界では、より信頼性の高い、一級建築士による住宅診断を掲げている会社も多くあり、建築士の需要が高まっています。 ホームインスペクターなどの民間資格に比べて、国家資格である一級建築士が転職に有利なのは当然でしょう。中古物件のリフォーム・リノベーションは、今後も伸びていく分野であることが予想されるため、実績を積んで、不動産分野で独立を目指すという選択肢があるのも魅力的です。

衣料・飲食企業などの店舗プロデュース

衣料や飲食などの大手は、出店する店舗のデザインや施工監理を行う部署を設けているケースが多くあります。建築系以外の大手企業へ転職するなら、建築士資格を生かせるこのルートが最適でしょう。設計やデザイン業務のほか、社内外へのプレゼンや工事費の管理なども担当するため、コミュニケーション能力をはじめ総合的なビジネススキルが求められます。成長が見込まれる企業やジャンルを狙うことで昇進や年収アップも期待できるのではないでしょうか。

建設コンサルタント

公共事業や民間企業など、さまざまな発注者の依頼を受けて、実現可能かどうかを調査し、企画を調整していく職種です。空港や駅、商業施設やビル、トンネルや橋梁といった比較的大規模な建築を対象に、地域調査や街づくりとの連携、周辺住民との話し合いなど、全体の調整を担当します。建築士資格を生かして、大規模なプロジェクトに関わりたいという方におすすめです。

一級建築士が設計以外で活かせるスキル

一級建築士は国家資格であり、建築・設計において欠かせない存在になっています。一方、一級建築士のスキルは他の業種に活かしていくことも可能なのです。建築士として知識や経験を積み重ねていくうちに、マネジメントスキルやコストを管理する能力が身に着いていくでしょう。

これらのスキルは、どんな仕事においても欠かせないものなのです。会社という組織のシステム上、上司と部下という関係は必ずといっていいほど発生します。 そのため、部下を適切に教育し、導いていくためにマネジメントスキルは必要不可欠です。

建築という仕事はチームを組んで行うものであり、同じ職場の人だけでなく外注のスタッフや委託元の企業などさまざまな人が力をあわせて家や建物を完成させます。 そのため、人やお金、計画を管理するマネジメント力が養われていくのです。

また、一級建築士はどのような資材を活用するかなどを自分の判断で決めるケースも少なくありません。 そして、お金に関することを委託元の企業や依頼主に説明する機会も多く、お金を管理するスキルが磨かれていきます。技術だけでなくコストを管理して、予算の範囲内で建築を完成させる力を持っていると言えるでしょう。

仕事を通して身に着くスキルを活かせる

一級建築士はさまざまな人と関わる機会が多い職業です。同じ建築士や建築会社のスタッフだけでなく、建物を建てる依頼をしてきた顧客や必要な資材の仕入れ先など、多くの人と対話しながら仕事を進めていきます。そのため、必然的にコミュニケーションスキルが身に着いていくのです。

コミュニケーションスキルがなければ顧客相手に納得がいく説明をできなくなってしまいますし、現場でどのように仕事を進めていくかスタッフに説明することもできません。適切な言葉を用いて分かりやすく話す能力は、どんな職種でも必要です。 事務系の仕事をする場合、職場のあらゆる人と関わることになります。

また、管理職に上り詰めると上司・部下の関係性を円滑に保つために、積極的にコミュニケーションをとらなくてはいけません。どんな仕事に就いても、コミュニケーションスキルがあると活躍の幅が一気に広がるでしょう。 そして、一級建築士として仕事するうえで欠かせないスキルとしてスケジュール力があげられます。

建物はいつまでに完成させるかがはっきり決まっていて、余裕を持ったスケジュールを組んで業務を遂行する必要があります。一級建築士は建物を建てる以外に顧客との打ち合わせやスタッフとのミーティングもこなしていきます。 多くの仕事を並行して行いながら、優先順位をつけて進捗管理をすることが重要です。そういった仕事を日頃からこなしている一級建築士は、スケジュール力が高いと言えるのです。

どんな仕事にも納期や締め切りがあります。そして、いつまでに仕事が終わるかはっきりさせてかつ仕事を終わらせることで、周囲の人々からの信頼を掴むことができます。常にスケジュールを管理しながら仕事している一級建築士は、高いスケジュール力を他の仕事にも活かしていけるのです。

数々のトラブルを乗り越える力

どの様な仕事にも当てはまりますが、品質の悪いものをつくると評判が下がり、仕事がこなくなってしまいます。一級建築士が仕事にしているのは、家や建物を建てることです。

そのため、より一層品質や安全性についての要求が高くなるのは当然です。そして、それを完成させなければいけない日も決まっているため、安全性を重視するあまり仕事が遅くなってしまっては意味がありません。一級建築士には、スケジュールを管理しながら納期までに品質の高い建物を完成させる力が求められます。

そして、建物を建てる時は資材の到着遅れや天気・気温の影響によってスケジュールが先送りになってしまうこともあるでしょう。その際にどのような対応をとって仕事を進めるか、顧客にどのように説明するかといったトラブルを解決する力を発揮するのです。このように目の前の課題やトラブルを解決する力は、どのような仕事に就いても成果を上げられると言えます。

一級建築士の資格が生かせる職種

建築に関するスキルを活かせる仕事は、残念ながら異業種にはあまり存在しません。建築に関する知識や経験は、あくまで建築業界で活躍するためのものです。ただ、マネジメント力やコミュニケーションスキル、コストを管理する能力など、一級建築士として働いていくうえで養われたスキルを活かせる職種はあります。

そして、建築に関する知識が求められる職業も存在するため、順番に解説していきます。自分の建築業界に関するノウハウを活かしながら転職したいと考えている方は、デベロッパーがおすすめです。デベロッパーとは土地の開発や販売、購入を取り扱う職業であり、不動産業に分類されます。

ただ、家やビル、施設などの建物を建てるために土地を開発するため、建築の知識がある人が活躍しやすくなっているのです。建築では建物を建てる仕事がメインですが、デベロッパーは街全体の開発を担うため、規模が変わってきます。

家だけでなく街づくりに興味があるという方は、ぜひデベロッパーに転職してみてください。開発する土地は都市部だけでなく地方のものを取り扱うこともあります。

また、家や土地の売買・購入などを仕事とする不動産業界も、一級建築士の転職先としてあげられます。建物に関する適切な知識を有しているため、顧客への説明や土地の査定といった面で活躍できることが予想されます。

製造系やプロデュース系の仕事も

製造業は、一級建築士が転職するメリットが多くなっています。建築の仕事をしていると、どのような家具や設備、資材が現場で必要とされているか自然と分かるようになります。そのノウハウを製造業の現場で活かすことで、多くの人に求められるような商品を作ることに繋がるでしょう。

また、資材に関する豊富な知識があれば製造全体のコストパフォーマンスを向上させることが可能です。そして、自分が一級建築士として培ってきたセンスを活かしたいと考えている人は、プロデューサーやコンサルタントなどといった職業もおすすめです。

クライアントの希望を聞いて建物の内部やイベントをプロデュースするにあたり、建築士の視点から見て可能かどうかという判断ができます。そこに自分の経験やセンスを活かした提案をして、より魅力的な空間を創り上げていきましょう。独創性が高くSNSで人気が出そうなおしゃれな建物・空間は、それだけで集客が見込める時代です。そのために、一級建築士で培ってきたスキルやセンス、経験を活用してください。

一級建築士ができる意外な仕事

一級建築士の意外な転職先として公務員があります。公務員と建築業界は一見縁がないように見えますが、公共施設の施工や管理といった重要な仕事があり、そこに一級建築士のスキルを活かせるのです。現場で仕事するというよりは、書類作成や依頼・スケジュールの管理といった作業が多くなっています。

そのため、体力的に建築の仕事を続けるのが難しくなってきた方にぴったりだと言えるでしょう。ただ、公務員はいつの時代も人気が高く、就職するには狭き門を突破しなければいけません。きちんと勉強して公務員の座を勝ち取ってください。

建築業界と似ているIT業界

IT業界は非常に伸びしろがあり、これからも発展が期待できます。建築業界も手書きの設計図からパソコンで作成した図面に切り替えるなどデジタル化が進んでいることから、建築に関する仕事をデジタル技術を用いて行うことが増えてきているのです。

納期まで仕事を終わらせる力やクライアントの意向を汲み取るコミュニケーションスキル、他のスタッフと連携をとりながら進めていく管理能力など、一級建築士で磨いた能力を活かしつつ、IT業界のエンジニアとして活躍していけるでしょう。

特殊建築物の定期報告調査という仕事もある

特殊建築物の定期報告調査とは、特殊な構造の建物が建築基準法をきちんと満たしているか調査・報告する仕事です。建築基準法にも規定されていて、建物の階数や床面積などによって定期報告の対象になるかどうか定められています。

この調査員になるためには一級建築士や二級建築士、建築基準適合判定資格者といった資格が必要なのです。そして、調査するにあたって建築基準法を熟知していることが求められます。

敷地や構造、強度、耐震・耐火の強度、避難設備に関して、法律を違反していないか調査するという重要な業務を担っています。一級建築士は建築法を把握したうえで仕事しているため、建築物が法律に適合しているかどうか見極める能力に長けているのです。一級建築士の資格や知識、経験を活かせる仕事だと言えます。

一級建築士が転職を成功させるには

では、上記のような職種への転職を成功させるためには、どうすればよいのでしょうか。一級建築士が転職活動の際に、気をつけたい具体的なポイントを紹介します。

キャリア設計を明確にする

一口に一級建築士といっても、その資格が生かせる仕事は多岐にわたります。幅広いキャリアを選択できるのが、建築士のメリットだともいえますが、広すぎるがゆえにきちんとキャリア設計をしていないと、転職先がなかなか決まらないということになりかねません。具体的な求人を探し始める前に、まずは自分の得意分野やスキル、これまでの経験の棚卸しをし、今後どのようなキャリアを築いていきたいのかを明確に定めましょう。

応募先にマッチした志望動機を伝える

応募したい企業や職種が決まったら、その企業にしっかりマッチした、志望動機を設定することが大切です。一級建築士は多種多様な転職先があるからこそ、漠然とした志望動機を使いまわすのではなく、その企業や部署が、求めている役割を正しく把握したうえで、より具体的な志望動機を伝える必要があります。

資格を生かした実務のエピソードを盛り込む

建築士は非常に価値の高い資格ではありますが、資格をもっているというだけでは、採用にいたらないのが現状です。志望する企業に応募するライバルもまた、建築士資格をもっているため、資格を生かして、現職でどのような実績を積んできたか、そこから得たスキルで応募先企業にどのように貢献できるのかなど、自分だけの具体的なエピソードで差別化を図るとよいでしょう。

まとめ

転職先に多種多様な選択肢のある一級建築士ですが、転職活動においては、自分の目指すキャリアを明確に設計することが重要です。まずは現職での経験やスキル、自分の強み、将来のビジョンなどを整理する自己分析が必要ですが、なかなか一人では難しいという場合には、転職エージェントを利用するのがおすすめです。無料で利用できる場合が多いので、建築士の転職を支援してくれる、転職エージェントに気軽に登録してみてはいかがでしょうか。 建設業界転職エージェントおすすめランキング

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