2024年問題って何?建設業の働き方改革について解説

公開日:2024/10/01  

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現在、さまざまな業界で働き方改革や待遇改善の流れが発生しています。建設業界も、例外ではありません。建設業界はもともと人手不足や休日出勤が発生しやすい業種のため、労働環境の改善は急務です。そこで今回は、建設業界の2024年問題、および働き方改革について詳しく解説していきます。

働き方改革・2024年問題によって変わったこと

建設業界では、2024年4月から働き方に関する新しいルールが適用され「2024年問題」として多くの課題が浮上しています。

主な変更点は、時間外労働の上限設定、時間外労働の賃金割増、有給休暇の義務化、そしてインボイス制度の導入です。

時間外労働の上限設定

まず、時間外労働については、36協定を結んでも月45時間、年360時間が上限となり、特別な事情がある場合でも年720時間が限度です。

これにより、従来のような無制限な残業は不可能になります。

時間外労働の賃金割増

次に、法定時間外労働の賃金が割増され、とくに中小企業では、60時間を超える時間外労働に対して50%の割増賃金が必要になります。

有給休暇の義務化

また、年5日の有給休暇取得が義務化され、正社員だけでなく、労働条件次第では非正規社員も対象となります。

この制度は2019年から施行され、従業員が有給休暇を取得可能にする責任が、企業に対して課せられます。

インボイス制度の導入

さらに、2023年10月から適用されるインボイス制度により、消費税の納税義務が明確化されます。

これにより、インボイスに登録していない個人事業主との取引が困難になるでしょう。

働き方改革が導入された理由と背景

働き方改革・2024年問題の背景には、建設業界が抱える三つの深刻な課題があります。

それは、慢性的な人材不足、労働人口の高齢化、そして長時間労働の常態化です。以下で、それぞれの課題について詳しく見ていきます。

慢性的な人手不足

建設業界は長年にわたり人材不足に悩まされてきました。

2021年11月の国土交通省の発表によると、建設業の就業者数は1997年の685万人から2020年には492万人に減少しています。とくに技術者は41万人から37万人に、技能者は455万人から318万人に減少しており、深刻な人材不足が浮き彫りになっています。

このような人材不足の影響で、職人一人当たりの負担が増大し、長時間の残業が常態化しているのが現状です。

労働人口の高齢化

次に、労働人口の高齢化も大きな課題です。

2020年時点での建設業就業者の年齢構成を見ると、55歳以上が全体の36.0%を占める一方で、29歳以下の就業者は11.8%にとどまっています。若年層の就業者が少ない理由の一つに、離職率の高さが挙げられます。

厚生労働省の発表によれば、建設業において令和2年3月高校卒の3年以内離職率は29.8%であり、全産業平均の27.0%を上回っています。この高い離職率が、若年層の定着を妨げている要因となっています。団塊世代の引退が進むなかで、若い労働力を確保することが急務となっているのです。

長時間労働の常態化

最後に、常態化している長時間労働も深刻な問題です。

建設業界は慢性的な人材不足にもかかわらず、需要は依然として高いため、他業種と比べても労働時間が長い傾向にあります。国土交通省によると、全産業の平均と比較して建設業の年間労働時間は364時間も長く、年間出勤日数は32日多いという問題があります。

さらに、製造業の平均と比較しても、年間の労働時間は147時間も長く、年間出勤日数は20日多いというデータがあります。これらの数字からも、建設業界における長時間労働の常態化が浮き彫りになっているのです。

国土交通省による働き方改革の具体的内容

国土交通省は、建設業の働き方改革の推進に向け、五つのガイドラインを示しています。

これらのガイドラインは、労働環境の改善と生産性向上が目的です。

労働時間の適切な管理

まず、労働時間を適切に管理することが重要です。

原則として、タイムカードやICカードを使用して労働時間を記録し、客観的な情報に基づいて管理しなければなりません。自己申告による労働時間の管理は、直行直帰など客観的な把握が難しい場合を除いて認められません。

自己申告の場合でも、労働者に対して適正な労働時間管理の必要性を説明し、適切に労働時間を把握するよう努める必要があります。

週休二日の導入

次に、週休二日を導入することも求められています。

建設業では、週休二日が確保されていない場合が多く、これが人材流出の一因となっています。人材不足を解消するためには、週休二日制を導入し、労働者が安心して働ける環境を整えることが必要です。

具体的には、工期や施工時期を適切に設定し、発注者にも適正な工期の設定を求めることが推奨されています。

給与・社会保険制度の見直し

給与や社会保険の制度を見直すことも重要なポイントです。

給与面では、発注者に対して適切な賃金水準の支払いを要請しています。技能に基づいて給与決定をする能力評価制度の制定も推奨されています。また、社会保険の面では、2020年から社会保険への加入が実質的に義務化されています。

新たに建設業の許可を受けたり許可の更新を受けたりする際には、社会保険への加入が必要です。

キャリアアップの推進

キャリアアップを推進することも、建設業における働き方改革では重要です。

国土交通省は「建設キャリアアップシステム」への加入を推進しています。このシステムは、就業者の情報を登録し、客観的な能力評価を可能にするものです。具体的には、働いた場所や期間、資格取得や講習受講の履歴が記録されます。

労働者一人ひとりに適切な評価がされることと、処遇の改善が期待されます。

IT技術の活用

最後に、IT技術、ICT建機を活用することが推奨されています。

慢性的な人材不足に対応するために、IT技術やICT建機を活用して生産性を向上させることが重要です。具体的には、ウェアラブルカメラで遠隔地から現場を把握したり、タブレットで書類手続きを電子化したりすることで、作業負担の軽減がはかれます。

また、ICT建機の導入により、作業の精度が向上し、オペレーターの作業負担が軽減される効果が期待されます。

働き方改革の具体的な事例を紹介

建設業界における働き方改革の取り組みとして、以下に二つの事例を紹介します。

残業・休日出勤を減らす環境づくり

一つ目は、残業や休日の作業を減らすための環境づくりです。

この取り組みでは、所定休日の土曜のうち月一回を作業所の閉所日とし、労働時間の短縮を図りました。また、週に一度のノー残業デーを実施し、会社と職員組合が協力して社員にノー残業デーの推進を促しました。これにより、時間外労働の削減に成功しました。

育児と仕事の両立の支援

二つ目は、育児と仕事の両立を支援する勤務体制の整備です。

この取り組みでは、出産する女性社員が全員育児休業を取得できるよう、育児休業を子どもが3歳になるまで取得可能としました。また、9歳未満の子どもを養育する社員には、育児のための短時間勤務制度を導入し、労働時間を6時間、6.5時間、7時間の中から選択可能にしました。

これにより、女性社員が育児と仕事を両立しやすい環境を整えたのです。

まとめ

現在、建設業界では2024年問題に対応するため、働き方改革が進められています。2024年4月から適用される新ルールでは、時間外労働の上限設定や賃金割増、有給休暇の義務化、インボイス制度の導入が主な変更点です。これにより、無制限な残業が制限され、労働環境の改善が図られます。背景には慢性的な人材不足、労働人口の高齢化、長時間労働の常態化といった課題があります。国土交通省は労働時間の健全化や週休二日の導入、給与・社会保険制度の見直し、キャリアアップの推進、IT技術の活用などをガイドラインとして示しています。これらの取り組みによって、建設業界全体の労働環境改善につながることが期待されているのです。

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