大工の仕事内容と年収は?

公開日:2020/11/01  


大工は建築士が設計した建築図面に従い、建築物を建てる職業です。木造建築物をメインとし、設計図を正確に三次元化する加工技術を持ちます。寺社仏閣建築、造船など細分化されてきた仕事ですが、現代はその有様も大きく変化しました。建材・建築技術について深い知識を持つ専門家ですが、具体的な仕事内容や年収はどのようなものでしょうか。

大工の仕事内容はどのようなものでしょうか

活躍する場は、木造住宅を中心とする建築工事現場です。現代は工法も大きく様変わりしましたが、木造軸組み工法の住宅では今も変わらず職人の腕に出来栄えが大きく左右されることは間違いありません。厳密には建築と型枠という分類に分かれるのですが、ここでは一般的に知られている建築の仕事内容についてまとめていきましょう。

冒頭でも触れましたが、その仕事は建築物を建てるため設計図に合わせ、実際に木造建築物をつくっていく内容となります。建築物に関するものは、骨組みはもちろん、床の下地から壁、天井、屋根まですべて手掛けるのが特徴です。一見すると鉄骨造やRC造などの現代建築物には活躍の場がないようにも見えますが、実際にはそうした建築物の内部工事を担っています。

作業は設計図を確認し、それに合わせて木材などを切り出す加工からおこなう場合もありますし、プレカットといってあらかじめカットされている部材を使う場合もあります。建材を準備し、搬入し、現場に入ってそれらを調整しながら組み立てていくのが仕事の大まかな流れです。建物には基礎と呼ばれる土台があることはご存じでしょうが、現場での仕事は基礎工事が終わったあとに主要な構造部材で骨組みをつくるところからとなります。

建物の本体となる床や壁、屋根などを張り、サッシ枠を取りつけて建物の形をひとつひとつつくっていき、専門の内装工事業者や電気工事業者などとも連携し、専門業者同士で協働するのも特徴です。個人住宅一軒建てるだけでも膨大な数の作業があり、そのひとつひとつを間違いなく正確に、美しく整えていくのが腕の見せどころと言えるでしょう。

大工の給料や年収の相場はどれくらいでしょうか

現在の主な就職先は、地域密着型の工務店です。地元に根付き、担当地域の新築住宅建築や住宅リフォーム施工などを請け負うのが一般的でしょう。また、大手のフランチャイズに加盟したり、ハウスメーカーと契約して下請けをおこなう場合もあります。こうした中で技術を磨き、ゆくゆくは独立開業して自身が社長となり、工務店を開くことも少なくありません。

給料や年収に関しては、厚生労働省が発表している「平成30年賃金構造基本統計調査」から見てみましょう。技術職のためレベルによって格差はありますが、平均年齢は48歳となり、月給に相当する金額を計算すると、平均29.3万円となっています。このほかにボーナスにあたる特別給与は平均26万円となっており、これらをもとに計算すると平均年収は約378万円という実態が見えてきます。

大変な仕事の割には、低めと感じるかもしれません。初任給は平均16.8万円で、この額は一般的な初任給額大学卒の約20.6万円、高専・短大卒の約17.9万円と比べても低くなっていることがわかります。

ただこの職種の場合、見習いと言われる期間があり、その間は日給7000円程度が相場となっており、どうしても高い収入を得ることは難しいのが事実でしょう。そうしたことも踏まえて大手の工務店では、見習い期間中だけ入れる寮などを用意し、住居費があまりかからずに済むように配慮しているところもあります。

修行を積んで技術を学び、実力を身につけた25~29歳あたりになると、平均年収も約323万円程度にまで上がります。ベテランとして現場を率いる立場になる45~49歳あたりでは、平均年収約457万円程度が相場です。

大工には職位があり、職人のマネジメントや指導をおこなう棟梁(とうりょう)になるとプラスアルファの収入も見込めるでしょう。棟梁は現場監督とは異なり、専門家の調整役として工事現場全体をまとめる役割を担います。ちなみに規模によってはほかの職人を雇い入れない場合もありますが、同様に責任者の立場になると一人親方などと呼ばれます。

大工になるにはどうすればよいのでしょうか

建築物を建てるという大仕事をするのに、特別な資格がないと聞くと驚く人も多いでしょう。ただ大工になるために必須の資格はなく、一般的には棟梁のもとで見習いからスタートし、現場でコツコツと修業を積んでいくスタイルになります。転職や求職サイトでも、大工の求人に未経験者を歓迎したり、見習いを募集したりする記載が見受けられますが、そのとおり、未経験からもスタートできる職業となっています。

見習いは、道具を覚えて準備したり、建材などを運搬したりといった肉体労働や掃除などの雑用からはじめます。覚えることは山のようにあり、先輩たちの仕事を見ながら道具の使い方、作業の流れなどを学ぶ必要があります。何をもって一人前と言うかは難しいところですが、ハウスメーカーであれば部材がすでに製品化されているため、組み立ては3年程度でマスターするのが一般的です。

木材の加工からおこなう昔ながらの技術を覚えるには最低でも5~10年はかかりますので、そこは覚悟が必要でしょう。必要な知識や技術を勉強する専門学校や職業訓練校などもありますが、現場での経験が一番重視される業種でもあります。体力勝負の力仕事ですので健康が第一ですが、一人前の職人を目指してコツコツと任された業務を実践することが大切です。

また、図面を正確に理解する知識や、クライアントとなる顧客への対応も必要な技術のひとつです。顧客から信頼されて依頼を受けて、はじめて成り立つ職業でもありますので、技術以外にも学ぶことが多いのは覚えておきましょう。独立開業した親方に弟子入りするという方法もありますが、その際には自分が目指す技術を学べるかどうかも確認が必要です。

例えばリフォーム専業の工務店に弟子入りしても、新築の技術を学ぶ機会はありません。また、基本的に研修などもありませんので、常に親方について回り、技術を見て盗むしか方法がないことも承知しておきましょう。手とり足とり懇切丁寧に教えてもらえるような環境ではありませんので、自分から努力しなければ何も得られないまま年月が経ってしまいます。

学問として勉強したいなら、やはり挑戦すべき資格があります。もちろん資格は必須ではありませんが、取得しているとより有利な仕事を得られる可能性が生まれるでしょう。

「1~3級建築大工技能士」は、国家検定制度による資格であり、受験するには実務経験が必要です。学歴なく実務のみで受験する場合は、3級は6か月以上、2級は2年以上、1級なら7年以上という実務経験が必要になります。学科と実技が実施され、知識や技能レベルを評価されるものです。

「2級建築士・木造建築士」は、どちらも比較的小規模な木造建築物の設計や工事監理ができることを認める国家資格です。一定の規模であれば設計もできるようになるため、仕事の幅はかなり広がります。

難しい国家資格には「1・2級建築施工管理技士」があり、6種類の工事管理に関する国家資格が設けられています。いずれも簡単ではありませんが、取得していれば顧客からの信頼度も上がり、仕事が大きく発展する期待のあることは間違いありません。

 

大工の仕事内容と気になる年収についてまとめてみました。日本に昔からある職人の中の職人というイメージのある職業ですが、現在は大きく業務が様変わりするなか、やはり高い専門技術を持つプロフェッショナルであることがわかります。平均すると決して年収は高くありませんが、ゆくゆくは独立し、自身で開業することも多い職業です。その道に入るのに特別な資格は必要ありませんので、未経験からでも見習いとして挑戦し、目指す技術を身につけることは十分に可能です。

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