建築業における新3Kとは?実現するためにできること
建設・土木業界における長年の悩みである3K(きつい、汚い、危険)から脱却し、新たな働き方新3K(給料がよい、休暇が取れる、希望が持てる)を実現すべく、国土交通省を中心に業界全体で取り組みが進められています。この記事では、新3Kの現状や実現するための具体的な取り組みについてくわしく紹介します。
建築業における新3Kとは?
建築業についての新3Kについて、さっそくみていきましょう。
もくじ
従来の3Kとは
建設業界は長らく「きつい・汚い・危険」を意味する3Kが常識とされてきました。肉体労働が主体であり、労働環境や給与面での課題が多く、新しい人材の確保を難しくしていました。
建設現場の特殊性からくる「きつい」は、物理的な力仕事や過酷な作業環境が原因であり、「汚い」は建設現場の多くが土や粉じん、化学物質で汚れることから生じています。そして「危険」は、高所作業や機械操作に伴う労働災害のリスクが常についてまわる実態がありました。
これに加えて、建設業の給与水準がほかの産業に比べて低く、休暇が少ないほかかっこ悪いイメージが組み合わさり、6Kや建設業は避けたい仕事といったネガティブなイメージが社会に根付いたのです。その結果、若者の建設業への志望が減少し、業界全体が人材不足に苦しむ状況が続いています。
新3K
平成27年に国土交通省と日本経団連が提唱し始めた新3Kは、これまでのネガティブなイメージを一新し、「給料が良い・休暇が取れる・希望が持てる」というポジティブな価値観を打ち出しています。具体的には、給与水準の向上や働き方の柔軟性の尊重、職場環境の整備です。
給料に関しては、これまでの低い水準を見直し、技能や経験に応じた優遇措置の導入で、建設業界を選択する魅力を高めています。また、休暇に関しては、週休二日制の推進や残業の抑制を進め、労働者が仕事とプライベートをバランスよく両立できる環境への改善が進んでいます。
そして、希望が持てるよう、働く意義ややりがいを感じられる職場環境の整備や、職業としての誇りを高める施策が進められているのです。
新3Kにより、建設業界が新たな担い手を確保しやすくなり、若者層にとって選択肢のひとつとなることが期待されています。業界全体が前向きな変革を進め、新しい時代において建設業が持つ可能性や魅力を広く社会に発信していくことが求められています。
新3K実現のために!国土交通省の取り組み
新3Kの実現に向けて、国土交通省でさまざまな取り組みが行われています。
現状と問題点
国土交通省の調査によれば、建設業許可業者数や建設業就業者数は減少傾向にあり、とくに高齢化が進行するなか、将来的な人手不足が懸念されています。平成30年3月時点のデータによれば、建設業許可業者数は464,889業者であり、前年度比0.1%の減少です。
また、建設業就業者数も平成9年のピークから約28%減少しており、このままの傾向が続くと、中長期的な就業者確保の必要性が高まります。
とくに高齢者の大量離職が予測され、若手労働者の確保が急務です。これにともない、労働時間の長さや休日確保の難しさが問題となり、業界全体において働きやすい環境の整備も急がなければなりません。若者にとっては魅力的な職場環境の提供が求められています。
働き方改革
国土交通省は平成30年3月に働き方改革加速化プログラムを発表し、労働時間の短縮や休日休暇の確保を促進しています。適切な工期設定での工事を要請し、工事用ロボットやICTの活用による生産性向上を図り、労働条件の改善を目指すプログラムです。具体的には、長時間労働を避けるための適正な工期設定や、工事用ロボットやICTを活用した作業の効率化が進められています。
また、週休二日制の導入や残業時間の削減もプログラムの重要な施策としての位置づけです。これにより、従来の「きつい・汚い・危険」なイメージを払拭し、「給料が良い・休暇が取れる・希望が持てる」という新しい価値観を業界に根付かせ、新たな労働力確保の促進が期待されています。
ICT技術の導入とその効果
プログラムにおけるICT技術の導入は、建設業界における生産性向上に大きく寄与しています。工事用ロボットやドローン、クラウドベースのプロジェクト管理システムの利用など、先進的な技術の導入により、従来の手作業や紙による作業が減少し、効率的で正確な工程管理が可能です。
その結果、作業時間の短縮やヒューマンエラーの削減が期待され、労働者の負担軽減につながります。また、適切な工期設定が行われることで、業界全体の労働時間を抑制でき、労働環境の改善に一役買っています。ICT技術の積極的な活用は、新しい働き方のモデルを提案し、業界の魅力向上にもよい影響を与えているのです。
若手育成への取り組み
若手労働者の確保が重要視されるなか、国土交通省は教育・研修プログラムの強化にも力を入れています。現場での技術習得だけでなく、新たな技術や安全対策のスキルを身につける機会の提供で、若手が将来にわたり業界に貢献できるような土壌を整備しているのです。
また、若手とベテランの交流を促進するイベントやプログラムも展開され、経験豊富なベテランからの指導や知識共有が行われています。これにより、若手がスキルを向上させるとともに、先輩からの経験を吸収し、業界の技術力向上に寄与しています。
安全対策と労働環境整備
国土交通省は安全対策にも力を入れ、労働環境の整備を進めています。現場での労働災害の防止や、従来の危険な作業においても安全が確保されるような取り組みです。安全な労働環境が整備されることで、労働者は安心して仕事に従事できるため、働きがいを感じやすくなります。これにより、業界全体の労働力の定着率が向上し、人材不足の問題にも一石を投じています。
持続可能な建設業の展望
国土交通省の取り組みにより、建設業界は持続可能な発展に向けた基盤が整備されつつあります。ICT技術の導入や労働環境の整備、若手育成など、多岐にわたる施策が展開され、業界全体のイメージ向上と将来への展望は明るいといえるのです。若者の新たな参入が促進され、新しい人材の育成で、建設業界の挑戦的なプロジェクトに対応できる力強い労働力の確保が期待されます。
新3Kを実現させるために企業ができること
最後に、新3Kを実現させるために企業ができることを紹介します。
労働時間の短縮と休日休暇の確保
労働時間の短縮と休日休暇の確保は、建設業界における最も重要な改革の一環です。国土交通省は工期設定の見直しやICTの導入によって生産性向上を図り、労働時間を短縮する取り組みを進めています。これにより、週休二日制の導入や残業時間の削減が可能となり、働き手のワークライフバランスを向上させます。
日給制の見直し
建設業界における日給制度は、不安定な収入と労働者の生活不安定化を招く要因です。月給制の導入により、労働者の収入が安定し、急な休暇や災害による収入減の不安を解消できます。これにより、若手の労働力を確保しやすくなります。
仕事上の価値観の変革
建設業界のイメージ改善が重要であり、かつての価値観や方法を無理に押し付けるのではなく、若者の価値観に合わせた対応が求められます。情報マガジンの発行や学生向けの見学会を通じて、建設業の働きがいや魅力をアピールすることが必要です。
まとめ
建築業界における新3Kは、過去のネガティブなイメージを払拭し、給与や労働条件の改善を通じて新しい担い手を確保するための取り組みです。国土交通省の働き方改革プログラムや具体的な施策を通じて、新3Kの実現に向けた改革が進められています。これにより、建設業界全体がより働きやすく、魅力的な環境へと変化していくことが期待されます。