一級建築士と二級建築士は何が違うの?それぞれの取得方法は?
建築士として働く際の大きな武器になるのは、建築士の資格でしょう。資格不問としている建築会社や設計事務所も多いですが、選考の通過率や仕事をするうえで必要な能力を考慮すると、建築士資格の取得が推奨されます。本記事では、一級建築士と二級建築士の異なる点や、それぞれの取得方法について解説します。
一級建築士・二級建築士の違い
まずは、一級建築士と二級建築士の違いについて詳しく説明します。
もくじ
取得条件の違い
一級建築士と二級建築士の取得条件には明確な違いがあります。
一級建築士は、大学、短期大学、高等専門学校などで指定科目を修めて卒業することが必要です。一方で二級建築士は、高等学校や専修学校の卒業でも受験資格が得られます。これにより、一級建築士の方が高度な学歴を求められる点が異なります。
試験難易度
次に、試験の難易度についての差異があります。
一級建築士試験は非常に高い難易度で知られており、直近の合格率が学科試験で約15%〜21%、製図試験でも30%前後と低い水準です。
これに対して、二級建築士試験は一般的に合格率が高く、学科試験で約35%〜43%、製図試験についても50%前後となっています。合格率だけで見ると、一級建築士の取得は、二級建築士に比べて困難です。
取得後の業務内容
さらに、取得後にできる業務内容の違いも大切なポイントです。
一級建築士は、非常に広範囲な建築物の設計に関与できます。たとえば、学校や病院、劇場、映画館などの大規模な建物の設計も可能です。一方、二級建築士は主に戸建住宅など小規模建築物の設計が主な業務範囲です。これは、二級建築士試験の難易度が比較的低いこととも関連しています。
キャリアプランを考慮して資格を選択する
最後に、将来的なキャリアや業務範囲を考える際に、資格の選択が重要です。
一級建築士は幅広い建築物の設計に携わることができるため、大規模な建築プロジェクトや特定の建築物の設計に興味がある場合に適しています。一方で、住宅の設計に特化したい場合や、取得の難易度を軽減したい場合には、二級建築士の資格も選択肢として考えられます。
一級・二級の同時受験はできる?
一級建築士と二級建築士の同時受験は制度上可能ですが、それぞれの試験内容や対策の違いが課題です。
一級建築士と二級建築士の学科試験は同じ時期に行われますが、製図試験において大きく違う点があります。一級建築士の製図課題は主に鉄筋コンクリート造に焦点を当てていますが、二級建築士の場合は木造と鉄筋コンクリート造の双方があります。
製図試験の課題がどちらの構造になるかは年によって異なり、その差異が対策の複雑さにつながるのです。そのため、どちらかに絞った対策をして受験するのが賢明といえます。
一級建築士の資格を取る方法とメリット
一級建築士の資格は、その高い専門性と幅広い設計範囲から、建築業界において最も高度な資格のひとつとされています。
この資格を取得するには、特定の学歴条件や実務経験、さらに厳しい試験をクリアする必要があります。以下に一般的な取得ルートと取得するメリットを紹介します。
建築系大学を卒業してから一級建築士を取得する
建築系の大学を卒業することが一級建築士の最短取得ルートのひとつです。
大学での学業は建築設計、構造設計、都市計画など広範な建築知識を獲得する場です。一級建築士になるには、大学卒業後に一級建築士の学科試験と製図試験に合格する必要があります。これらの試験は一級建築士の資格を目指す人にとって大きな壁でしょう。
学科試験では建築設計や構造計算、法規などの幅広い知識が問われ、製図試験では実際の建築図面を作成する能力が試されます。そして、一級試験に合格した後、少なくとも2年から3年以上の実務経験を積む必要があります。
この実務経験は一級建築士としての実務能力を磨くための重要なステップです。必要な実務経験を積んだ後、さらに一定の審査を通過することで一級建築士の資格を正式に取得できます。
資格二級建築士を取得後、一級建築士を取得する
はじめに二級建築士の資格を取得する方法もあります。
二級建築士の試験は一級に比べて合格率が高く、相対的に取得しやすいとされています。二級建築士として実務経験を積み、その後一級試験に合格することで一級建築士の資格を目指すことができます。この場合、実務経験の要件は4年以上となります。
一級建築士資格のメリット
一級建築士資格を取得することには多くのメリットがあります。
まず、どんな規模や構造の建築物でも設計する能力がある点が挙げられます。大規模な商業施設や公共施設、さらには住宅設計にいたるまで、幅広いプロジェクトに携わることが可能です。
また、一級建築士の資格は高い専門性と難易度から、信頼性や専門性の証明として市場価値が高まることが期待されます。このため、クライアントやほかの建築プロフェッショナルからの評価も高いです。一級建築士の取得には時間と労力が必要ですが、その努力は将来的なキャリアの発展や専門性の向上につながるでしょう。
二級建築士の資格を取る方法とメリット
二級建築士資格は、一級建築士資格と比較すると難易度は下がりますが、それでも相応の準備が必要です。
以下に、一般的な二級建築士の取得ルートとそのメリットを具体的に解説します。
建築系高校等を卒業し二級建築士を取得する
建築系の高校を卒業することが二級建築士の取得に向けた最初のステップです。
建築に関連する基礎知識や技術を学びます。高校卒業後、二級建築士の学科試験と製図試験に合格する必要があります。学科試験では建築基準法や建築物の構造、法規などが問われ、製図試験では実際の建築図面を作成する技術が試されます。
二級試験に合格した後、少なくとも2年以上の実務経験を積む必要があります。この実務経験は建築業界での実務能力を高め、将来的なステップアップのための基盤となるでしょう。必要な実務経験を積んだ後、一定の審査を通過することで二級建築士の資格を正式に取得できます。
建築系大学を卒業し二級建築士を取得する
次に、建築系大学を卒業してから資格を取得する方法です。
建築に特化した大学で学び、幅広い建築知識と専門技術を習得します。大学卒業後、二級建築士の試験に合格することで資格を取得できます。実務経験の要件はありません。
実務経験を7年積み、二級建築士を取得する
まず、建築業界で7年間以上の実務経験を積みましょう。
実務経験を積んだ後で、二級建築士の試験に合格することで資格を取得できます。
二級建築士資格取得のメリット
二級建築士の資格を取得することには、いくつかのメリットがあります。
まず、建築業界において、二級建築士の資格をもっていることは大きなアドバンテージとなります。とくに建築設計事務所や建設会社などで、基本的な設計業務や図面作成などをまかされやすくなるでしょう。
そして、一級建築士を目指す際には、二級建築士の資格を取得することがひとつのステップとなります。一級建築士はより高度な建築物の設計が可能であり、そのための土台として二級建築士資格は重要です。
二級建築士の取得過程で習得する建築の基礎知識や製図技術は、将来的な建築設計のキャリアにおいて貴重なものです。実務経験を通じて磨かれた技能は、設計業務において信頼される要素です。
まとめ
一級建築士、二級建築士資格の取得は、それぞれ異なる道を辿ります。しかし、どちらも建築業界でのキャリアにおいて重要な役割を果たします。一級建築士は高度な学歴と実務経験が求められ、大規模な建築物の設計に深く関与できる能力をもちます。対して、二級建築士はより早い段階で取得可能であり、基本的な設計業務を担当する場面が多いです。しかし、将来的に一級建築士を目指すためのステップとしても価値があります。どちらの資格も業界での信頼性と専門性を高め、設計業務の幅を広げるうえで重要な基盤を提供します。