電気主任技術者ってどんな仕事をするの?資格取得の難易度は?

公開日:2023/08/01   最終更新日:2023/09/15

電気主任技術者

転職や将来のキャリアアップを目的として、「電気主任技術者」という資格の取得を目指している方もいるでしょう。電気主任技術者は工場の電気設備の点検や工事、オフィスの点検などに欠かせない資格であり、取得できれば人材価値が上がる資格のひとつです。そこで本記事では、電気主任技術者とは何か、メリットや取得難易度などを解説します。

電気主任技術者とは

電気主任技術者とは、建物内に存在する電気設備の保安管理を担当する国家資格であり、いわば電気設備の専門家です。ビル、病院、工場などの施設における電気設備の工事、保守、運用に関する監督業務を担当します。

一般的に、電気工事といえば電気工事士が担当するイメージがありますが、電気工事士は電気設備の工事や修理などの実務を行います。

一方、電気主任技術者は監督役として法令や安全基準に従い、電気設備の安全な運用を確保する役割を担います。具体的には、工事の進行状況を確認や、品質管理、問題やリスクを予防または解決するため仕事を行うのが電気主任技術者です。

なお、電気主任技術者は国家資格にあたり、試験に合格しなければ取得できません。取り扱い可能な電圧によって第一種・第二種・第三種があり、第一種が最も合格難易度が高いですが、たとえ第三種であっても簡単に合格できないほど試験内容がむずかしくなっています。

需要がある資格であり、なおかつ合格難易度が高いからこそ、取得できれば転職やキャリアアップに有利になるといえるでしょう。

電気主任技術者ができること

電気主任技術者は、工場やビルなどの建物の電気設備に関する工事や運用などを行う存在ですが、より具体的な仕事内容を紹介します。仕事内容は主に3つに分けられるため、ひとつずつ解説します。

電気設備の定期点検

電気主任技術者は、月次点検や年次点検を通じて電気設備の定期点検を実施します。これには電圧と電流の測定、漏電の確認、電気機器の外観点検や温度測定、そのほかの異常の有無の確認などが含まれます。

年次点検では、毎月の点検に加えて接地抵抗測定や絶縁抵抗測定、保護継電器試験なども行います。定期点検は電気設備の安全性と信頼性を確保するために欠かせない作業です。

電気設備の竣工検査

電気主任技術者は、新しく設置された電気設備の竣工検査を行います。竣工検査では、新たに設置した設備が安全に使用できるかどうかを確認します。点検項目には、電気機器の外観点検、接地抵抗測定、絶縁抵抗測定、絶縁耐力試験、保護継電器試験などがあります。

竣工検査は詳細な作業であり、多くの試験項目を扱うため、専門知識と経験が必要です。

電気設備の故障対応

電気主任技術者は、電気設備に生じた不具合や故障の原因を特定し、対処策を判断します。一般的な故障の原因としては、電気機器の経年劣化、小動物による侵入、大雨や雷による不良などが挙げられます。

必要に応じて修理や工事を行う場合は、電気工事士に依頼し、現場での監督を行います。電気設備の故障は重大な事故につながる可能性があるため、予防保全の観点から定期点検を重視することが重要です。

電気主任技術者の資格を取得するメリット

転職や将来のキャリアを考えて、有利な資格を取得したいと考えている方も多いでしょう。ここでは、電気主任技術者を取得するメリットを解説します。

需要があること

電気設備の点検や管理は、あらゆる業界で必要とされてており、いうならば事業用の電気設備があるところなら需要があります。したがって、電気主任技術者の資格を持つことで、製造業や通信業、ホテル、商業施設、病院、大学など、幅広い分野で需要があります。

インフラ設備である電気や電気設備は、現代社会で不可欠な要素であるため、それに関係する資格を持つことで安定して仕事を得やすくなります。

就職や転職に有利になること

電気主任技術者の需要は将来的に増加すると予測されています。経済産業省が行った調査によれば、電気主任技術者の多くが高齢化しており、将来的には人材不足が懸念されています。

さらに、オフィスビル再生可能エネルギー設備の需要も増加していることから、今後需要は高まると考えられています。そのため、若いうちに電気主任技術者の資格を取得すると、就職や転職において有利な要素となります。

業務における信頼度が上がりやすい

資格があることで、責任のある業務を任せられたり、スキルやノウハウがあることの賞めになり信頼の獲得しやすくなったりするメリットもあるでしょう。

電気主任技術者は、電気設備の安全性を確保・維持するために欠かせない職種であり、それに必要不可欠な資格を取得することで、責任のある業務を任せてもらえてやりがいにつながります。

また、合格難易度の高い試験に合格していることで、職場の人やクライアントから信頼を得やすくなるのも魅力でしょう。このように、安定した職業として、キャリア形成や信頼性、責任あるポジションを任せてもらえるといった複数のメリットがあります。

電気主任技術者の資格試験は難しい?

電気主任技術者の資格試験は、一般的に合格難易度が高いとされています。というのも、ひとえに電気主任技術者といっても、取り扱える仕事の規模に応じて第一種・第二種・第三種の3種類があり、どの区分であっても難易度が高いからです。

仮に、最も基礎的な資格である第三種であっても合格率は低く10%ほどしかありません。つまり、10人の受験者に対して1人、100人の受験者に対してわずか10人程度しか合格できない厳しい試験なのです。

また、第三種の試験は過去に出題された問題と似ている問題がほとんど出題されないことも難易度を高める要因となっています。類似問題であっても出題形式や内容を変えて出題されるため、基礎知識がしっかり身についていないと回答できません。

一般的な試験なら、過去問を繰り返し行うことで合格できる試験も多いですが、第三種は単に過去問を解くだけでは合格が困難であり、確かな基礎知識と応用力が求められます。

また、第三種では、4つの科目に合格する必要があります。科目別合格制度が導入されており、前年度および前々年度に合格した科目が申請することで免除される制度もあるため、一度の試験で4科目すべてのクリアする必要はありません。そのため、あらかじめ長期的な計画を立て、数年の試験で4科目合格を目指すケースも少なくありません。

なお、4つの科目の中で最も難易度が高いとされるのが理論科目です。理論は他の科目の基礎となる科目であり、電気の性質や電気回路、電子回路など、幅広い知識が求められます。さらに、計算問題が多く出題されるため、数学の知識も欠かせません。初めて電験三種に挑戦する場合は、理論と数学の勉強から始めることが重要です。

電気主任技術者の資格試験は、広範な知識と理解力を要する難しい試験です。合格には十分な準備と取り組みが必要であり、根気よく継続して学習することが求められるでしょう。

まとめ

電気主任技術者は、事業用の電気設備を設置したり、運用したりするうえで欠かせない人材です。そのため、資格を取得することで人材としての価値が高まり、転職やキャリアアップに有利になるでしょう。また、責任ある業務を任せてもらえるやりがいや、信頼を得やすくなるといったメリットもあります。しかし、資格の合格難易度が高いため、簡単に取得できるものではありません。取得を目指すなら、計画的かつ効率的に対策を行うことが求められるでしょう。

 

【参考】 

https://kensetsutenshokunavi.jp/c/content/job_guide/job_guide_10/ 

https://www.u-can.co.jp/course/data/in_html/121/column/column01.html 

https://www.cic-ct.co.jp/denken/column08 

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