まったく異なる職種から建築設計業界に転職するのは難しい?

公開日:2022/03/01   最終更新日:2022/04/01


住宅はもちろん、学校などの公共施設や商業施設など、さまざまな建物をつくる建築設計業界。魅力的に感じる人も多いのではないでしょうか。そこで、今回は異業種からの建築設計業界への転職について、仕事内容・有利になる資格・注意点を取り上げながら、詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。

異なる職種・業界からでも建築設計業界への転職は可能

まず、建築設計業界は、異なる職種・業界からでも転職は可能です。建築設計業界の仕事は国家資格が必要で、狭き門を突破しなければいけないイメージがある人も多いのではないでしょうか。たしかに、専門知識が必要とされる仕事も多く、経験や資格がある人が有利であることは事実です。

しかし、一方で、建築設計業界は人手が不足しており、職人の高齢化が進んでいる業界でもあります。令和28月建設業界の有効求人倍率は5.78倍と高く、深刻な人手不足がうかがえます。新卒で建築設計業界に入った人材と比較するとハンデはあるでしょう。しかし、異業種からの転職した人も多く、丁寧に教育してくれる会社もたくさんあります。自分のがんばりと会社との相性次第で、活躍できるチャンスが十分にある業界といえるでしょう。

異なる職種からの転職におすすめの建築設計の仕事とは

仕事内容は、以下の7つの職種に分けられます。

■(1販売・営業職

販売・営業職は、建物や土地を販売するのが仕事です。お客様と一番近い職種として、お客様の要望を的確に把握し提案するなど、重要な仕事といえるでしょう。異業種で販売・営業の仕事をした経験があれば、採用されやすいです。

■(2現場作業員

現場作業員は、工事現場で作業する職種です。重機オペレーターやとび職、鉄筋工、大工、左官工、塗装工、内装工、電気工事士、設備工事士などの種類があり、それぞれ専門技術を習得しています。未経験者も参入しやすい職で、技術を身に着けていくことが可能です。

■(3施工管理職

施工管理職は、工事のスケジュールを決め、建物の完成までを工程管理や安全管理をする仕事です。現場責任者・現場監督とも呼ばれ、リーダーシップや危機管理能力が求められる仕事ともいえるでしょう。施工管理職になるには、建築施工管理技士や土木施工管理技士などの資格が必要です。建築現場では施工管理技士を1名以上配置することが法律で定められているため、資格取得をサポートしてくれる会社も多いですよ。

■(4設計職

設計職は、建物の内装や外装はもちろん、基礎部分などの構造や、空調・配線などの設備をも設計する仕事です。お客様とやりとりしながら、お客様の要望をくみ取るコミュニケーション能力も重要でしょう。中途採用の場合は建築士の資格を持っている人が有利です。未経験でもチャレンジしたいなら、まずは施工管理職を目指し、実務経験を積んでから設計の仕事にも参加するというルートをおすすめします。

■(5設備工事職

設備工事職は、電気・ガス・水道・ネットなどの設備をつくるのが仕事です。電気工事士・給水装置工事主任技術者・水道技術管理者などの資格があります。働きながら資格取得を目指しましょう。

■(6事務職

事務職の仕事は、書類の作成や従業員の管理などです。事務職の経験があれば、チャレンジしやすい職種でしょう。

■(7経理

経理は、建設設計会社のお金の流れを管理しています。異業種で経理の仕事をしていれば、優遇されやすいです。

建築設計業界へ転職する前に身につけておきたいスキル

建築設計業界は、特殊で専門的な仕事を扱っています。そのため、建築設計業界に転職する前に身につけておきたいスキルもさまざまです。

たとえば、スケジュール管理能力。建築現場は、細かいスケジュールのなか、さまざまな技術者が入れ替わりながら、工程が進んでいきます。そのため、スケジュール通りに作業を完了させることが重要です。どれほどの期間で工事を行えるのかを把握し、行動に移せる人材が求められています。

ほかにも、コミュニケーション能力も重視されています。建築の仕事は、多くの人が関わり合いながら進んでいくもの。スタッフ同士の連携はもちろん、お客様とのやりとりでもコミュニケーション能力は欠かせません。建築設計業界は、チームで仕事をするのが好きな人に最適な業界ともいえます。

建築設計業界への転職が有利になる資格

資格や経験がなくても転職できる建設業界ですが、資格があれば、より条件のいい転職がかなえられるでしょう。ここでは、転職に有利な資格を4つご紹介します。

どの資格もキャリアアップや年収アップにつながるので、チェックしてみてください。ほかにも、インテリアコーディネーター・CAD利用技術者試験・ハウスクリーニング士・防犯設備士などの民間資格は、建築に関する知識を身に着けるのに最適な資格でしょう。

二級建築士

建築士の資格は国家資格で、木造建築士・二級建築士・一級建築士の3種類があります。一級建築士と二級建築士が異なるのは、扱える建物の規模です。二級建築士は、取り扱える材質や大きさに制限がありますが、一級建築士には制限がなく、ありとあらゆる建物を取り扱えるようになります。

二級建築士の資格は、建築系の学校で指定科目を修めて卒業すれば実務経験0年、それ以外であれば実務経験を7年積むと、免許登録ができるようになります。建築系の学校を卒業していない人は、転職しやすい会社で実績を積み、資格取得を目指すのも一つの手でしょう。

建築CAD検定試験

建築CAD検定試験とは、CAD(キャド)を用いて建築用図面を描く技量を測る試験のこと。CADは、Computer Aided Designの略で、コンピューターを使用して作図できるようにしたソフトのことです。等級は准1級・2級・3級・4級で構成され、高校生は4級から、社会人は3級から受検します。誰でも受検できる資格なので、未経験から建築設計業界に転職しようと考えている人には最適でしょう。通信講座やスクールでも学べるので、チェックしてみてください。

施工管理技士

施工管理技士とは、建築施工管理技士・土木施工管理技士・電気工事施工管理技士・管工事施工管理技士・電気通信工事施工管理技士の7種類に分けられ、それぞれ1級と2級で構成されています。受験資格には実務経験が必要です。それぞれ必要な実務経験の年数が異なるので、事前に確認しましょう。

建設業経理事務士・建設業経理士

建設設計業界は、専門的な用語や会計処理が必要なので、一般的な経理とは異なります。そこで、建設設計業界の経理業務を専門に行う簿記の資格が建設業経理士です。3級や4級に合格すれば、建設業経理事務士と名乗れ、1級や2級に合格すれば、建設業経理士と名乗れます。特に2級以上を合格し、建設業経理士の資格が得らえれば、転職に有利にはたらくでしょう。

異なる職種から建築設計業界への転職する際の注意点

建築設計業界への転職を後悔しないためにも、以下のことに注意してください。

実務経験が積める建築士事務所を選ぶ

建築士の資格は、学校に通わなくとも、7年以の実務経験を積むことで、免許登録ができるようになります。しかし、実務経験を積めるのは、都道府県知事に登録をしている建築士事務所のみです。建築会社と名乗っていても、実際にはきちんと登録されていない事務所もあるので注意してください。実務経験が積める事務所かどうかは、ネットで簡単に調べられます。

建築士を目指すなら早めに動きだそう

建築士として建築設計業界に携わりたいと考えている人は、早めにスタートを切りましょう。できれば20代のうちに動き始めることをおすすめします。4年制大学をストレートで卒業し、新卒で建築士としてのキャリアをスタートさせた人もいる中で活躍するには、少しでも早く資格を習得することが重要です。

応募条件が緩く、大量募集している求人に注意する

建築設計業界の仕事は、資格や経験を重視しているものが多いです。そんな中で、「未経験可」などように応募条件が緩く、大量募集している会社には注意してください。

特に、長期間募集し続けている会社も避けた方がいいでしょう。簡単な仕事や肉体労働ばかりを押し付け、スキルが身につかない会社である可能性が高いです。転職サイトなどで、仕事内容と会社の評判を確認しておきましょう。

従業員の教育制度が整っているか確認する

異業種から未経験で転職する場合、働きながらスキルを身に着けられる環境であるかが重要です。建築業界はハードな肉体労働が求められる会社も多いですが、教育制度や福利厚生がしっかりしていれば、長く働き続けられるでしょう。定期的に勉強会を開催していたり、資格取得のサポートをしていたりするなどの教育制度が整っているかをチェックしてみてください。

 

今回は、異業種からの建築設計業界への転職についてお伝えしました。建築設計業界は、仕事内容もさまざまで、人手不足の状態なので、転職できる可能性が高い業界です。建築CAD検定試験や建設業経理士など、事前に受検できる資格をゲットし、転職にチャレンジすれば、採用されやすいでしょう。また、建築は、多くの人が関わり合いながら進んでいく仕事です。チームで仕事をするのが好きな人に最適でしょう。

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