会社から支給される“手当”とは?支給のルールや種類についても解説!

公開日:2022/06/15   最終更新日:2024/06/19


給与明細を見ると“手当”という項目が複数登場します。手当が多いほど給与総額は増えるため、嬉しい存在であることは違いありません。しかし、手当によっては何のために支給されているのか不明なものもあるのではないでしょうか。今回は給与明細に記載されている各種手当について、種類や支給を受ける条件について解説します。

基本給と手当の違い

給与明細にはさまざまな項目が記載されています。支給項目の欄には基本給、職能給、残業手当、家族手当、通勤手当など、名目の異なる複数の収入項目が並んでいるのです。とくに手当については、企業によって名称も微妙に異なります。それぞれの手当がどのようなルールや条件にのっとり、どのような目的で支払われているかご存知ですか?

基本給というのは、一般的には労働者の年齢や勤続年数、経験、スキル、業績などに応じて支払われる、賃金の根幹です。給与形態が日給、週給、月給、年俸の別を問わず、基本の賃金は基本給と呼ばれます。支給額は企業ごとに給与規定で決められており、賞与や退職金を算定するうえでの基礎となっています。

一方、基本給以外の賃金については諸費用という括りで手当と呼ばれるのです。オプション的なポジションにあり、労働条件や勤務環境などによって支給される額が異なります。手当は誰にでも支給されるわけではなく、要件に該当する場合にのみ支給され、社員のモチベーションを高めたり、社員間の金銭的な負担差を軽減・縮小したり、社員が仕事を円滑に進めるうえで欠かせない必要経費を会社が補填することなどを目的として支払われます。

法律で定められている手当とは

手当には、労働基準法によって支給が定められた手当とそうではない手当が存在するのです。前者は時間外手当(残業手当)・深夜手当・休日出勤手当、後者は通勤手当・出張手当・住宅手当などが該当します。法律で定められている手当は、労働基準法371項、4項に要件が記載されています。

時間外手当は労働基準法で定められた18時間または週40時間を超える労働について支払われる手当で、通常の賃金の1.25倍にあたる割り増し賃金が支払われるのです。この倍率は1か月の時間外労働時間が60時間を超える場合には1.5倍が適用されます(中小企業は20234月以降適用される予定)。休日手当は法定休日に労働する場合に発生する手当で、通常の1.35倍にあたる割り増し賃金が支払われます。深夜手当は深夜22:00から早朝5:00までの7時間の間の労働分に適用される手当で、通常の1.25倍(25%)にあたる割り増し賃金が発生するのです。

なお、割増賃金は重複して適用されます。たとえば、深夜手当1.25倍(25%)が発生する時間帯に休日労働1.35倍(35%)した場合には、重複した1.6倍の割増賃金(60%)が適用されます。これらの手当は労働基準法で企業に対し支払いが義務として定められており、支給されない場合には罰則が科せられるのです。

会社が任意で支給している手当の種類

会社が独自で整備している手当には、ほか企業との差別化を図ることや、従業員の帰属意識を向上させることなど、企業の人事戦略が反映されています。仕事に対する能力や姿勢・貢献度を評価する仕事給的手当と社員の生活を保障する生活給的手当、主に経費の補填を目的としたそのほか手当があります。

■仕事給的手当の種類

仕事給的手当は、職務内容・能力・勤怠態度・業務成果といった仕事に対する貢献度を物差しとして金額を算定する手当です。職務に関する手当に該当するのは役職手当、営業手当などです。役職手当は業務上の役割や責任の重い立場の社員に支給される手当のこと。営業手当(または営業職務手当)は、営業職の社員の業務が円滑に進むよう、営業活動で発生する経費に対して支払われます。

また、営業職は時間外や休日などの顧客対応や外回りなど労働時間の管理が難しいため、営業時間外手当が支給されることもあります。社員が所有する企業にとって必要な能力に関して支払われる手当には、技能手当・資格手当といった名称が与えられているのです。資格手当は企業経営に必要な資格を持つ場合が支給条件となります。もちろん、企業にとって関係のない資格や技能は対象外です。勤怠態度に関する手当は、無遅刻無欠席だった際に支給される皆勤手当と、欠勤が少ない場合に支給される精勤手当があります。

これらの手当は労働者の勤務奨励・出勤促進を目的としています。業務成果に関する手当は、インセンティブ(報酬)と表現することもあるのです。個人の成果を評価する達成手当、歩合給や、運送業界特有の無事故手当などが該当します。達成手当は会社が定めたノルマ(目標)などを達成したときに支給される手当、歩合給はサラリーマンやタクシー運転手など個人の業績や成果に応じて支給される手当、無事故手当は一定期間無事故で運転したドライバーに支給される手当です。業務成果に関する手当は、社員の労働意欲の向上を目的として支給されます。ほかにも勤務中にケガや病気などの危険をともなう業務に対する危険手当や、会社の指示により会社内の見回りや電話対応を行う宿泊・日直手当などを導入している企業もあります。

■生活給的手当の種類

生活給的手当は労働者の生活を補助・保障するサービス的な意味合いがあるのです。家庭環境、生活環境などによって労働者が不利益を被ることを回避することを目的とした手当です。家族手当は妻子など、養うべき家族がいる労働者の生活費に配慮して支給される手当のこと。住宅手当は、住宅ローンや家賃の一部を補助することを目的として支給されます。

地域手当は、社員が働いている地域の気候や経済特徴によって発生する支出の差を調整することを目的とした手当です。地方に比べて物価高の傾向にある都心に勤務することになった者に向けた都市手当や、真冬の暖房費を補うための寒冷地手当、離島や山間部など生活を送るうえで不便な地域に勤務する職員を対象とした離島手当などがあります。単身赴任手当は転勤命令により家族や実家と離れ単身赴任の状態となった場合に支給される手当です。転勤によって家族と別居せざるを得ない場合に支払われる別居手当、単身赴任者の帰省用交通費を補助する帰省手当が該当します。また、珍しい生活給的手当として給食費補助制度や入学祝金制度などもあります。

いずれも株式会社中西製作所で導入されている手当で、前者は小学生の子どもを持つ社員に対し支給され、後者は従業員の子どもが小学校・中学校に入学した際にお祝い金として1人あたり1万円を支給するものです。ZOZOTOWNを運営している株式会社ZOZOでは、幕張指定エリアに住む従業員にのみ月5万円が支給される幕張手当が存在します。生活給的手当には、企業によってはユニークな手当を導入して、就活生や転職活動者にアピールを図っているケースも見られるのが特徴です。

■そのほかの手当の種類

そのほかの手当には、通勤手当やマイカー手当、借上手当が含まれます。いずれも勤務にあたって必要となる費用の補填を目的に支給される手当です。通勤手当は通勤するために必要な費用を、交通手段別に距離、時間、燃料代などから算定します。会社によっては通勤用の定期券を現物支給することもあります。マイカー手当は通勤手段を社員の自家用車に限定した場合の手当で、ガソリン単価と燃費、距離のいずれかによって金額を算定するのです。借上手当は社員個人が所有する自動車や携帯電話などを、会社が利用するための補填として支給されます。

手当には税金・社会保険料がかかる?

手当は内容によって税金・社会保険料などの適用が変わります。慶弔見舞金・結婚祝い金・大入り袋など臨時支給される手当、定められた限度額以下の通勤手当、出張や転勤で利用した旅費などが該当し、非課税扱いになるのです。それ以外の大半の手当は給与の一部とみなされて、課税対象となります。社会保険料は、深夜手当、休日出勤手当、残業手当などの時間外労働手当、職務・役職手当、家族手当、住宅手当、通勤手当に適用されます。

 

給与は基本給と手当で構成され、基本給は固定額、手当は条件によって支給額が変わり、支給要件に該当する場合にのみ支給されるのです。手当には時間外手当(残業手当)・深夜手当・休日出勤手当など法律で定められた手当と、それ以外の手当があります。後者は社員のモチベーション向上や、ほか企業との差別化、必要経費の補填などを目的として支払われます。手当の多くは給与の一部とみなされるため、課税対象となっているのです。

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