構造設計のスペシャリスト!構造設計一級建築士について徹底解説

公開日:2023/11/01   最終更新日:2023/07/28


大型ビルやマンション、ショッピングモールなど大型建造物や大型商業施設を建設するために欠かせない「構造設計一級建築士」という資格を知っていますか?一級建築士はメジャーで多くの方が知っていると思いますが、構造設計一級建築士は聞いたことない方もいるでしょう。ということで本記事では構造設計一級建築士について詳しく解説します。

構造設計一級建築士とは

構造設計一級建築士とは果たしてどのような資格なのでしょうか。

一級建築士よりも上の資格

構造設計一級建築士は平成20年度の改正建築士法によって定義された比較的新しい資格です。構造設計一級建築士が行う仕事内容は、他の一級建築士が設計した複雑な建物の設計を確認したり、自身で巨大な建物の設計を行ったりします。

一級建築士よりもレベルが高く、知識が必要な職業といえるでしょう。より具体的な仕事内容に関しては次の章の「構造設計一級建築士ができること」で解説していますので、そちらをご覧ください。

なぜこの資格ができたのか

巨大な構造物であっても、一級建築士であれば建設できると疑問に思われる方もいるでしょう。ではなぜ一級建築士より上の構造設計一級建築士という資格ができたのでしょうか。

それはある事件が関係しています。それは2005年に発覚した「耐震偽装問題」です。国土交通省から2005年11月にマンション20棟、ホテル1棟の計21棟の耐震構造計算書に偽装があったことが公表されました。欠陥があったマンションやホテルは鉄筋やコンクリートの数が減らされており、震度5の地震にも耐えられない状態だったといえます。

この事件を踏まえて、国土交通省は「構造計算偽装問題対策連絡協議会」を設置し、安全確認や再計算による建物の耐震性の確認をしました。また国土交通省は「本事件の原因は私利私欲のために耐震構造計算書を偽装した本人にも責任があるものの、偽装した設計書を見抜けなかった建築確認制度にも問題がある」とし、このような事件が再発しないように「構造設計一級建築士」という資格があります。

構造設計一級建築士ができること

では次に構造設計一級建築士が対応できる建築物の種類についてお話しします。資格を取得する上でどのような仕事の幅が広がるのか確認しましょう。

大規模な建築物とは

構造設計一級建築士は構造設計が難しくなる複雑な構造体や大規模な建築物に対して、他の一級建築士が構造設計したものを確認する立場にあります。次の条件に当てはまれば、大規模な建造物として取り扱われます。

・木造で高さ13m以上or軒高が9mを超える建築物
・鉄骨造で4階建て以上
・鉄筋コンクリート造で高さが20mを超える
・4階建て以上の補強コンクリートブロック造の建築物
・4階建て以上の組積造の建築物
・高さ60m以上で高難度の構造設計が求められる建物

このような条件がついた建物を建設する際には必ず構造設計一級建築士が配置されます。

構造設計一級建築士が設計できる建築物の種類

では次に、構造設計一級建築士が設計できる建物の種類について解説します。構造設計一級建築士が設計できる建物の種類は以下の通りです。

・学校・病院・劇場・映画館
・鉄筋コンクリート造
・1000平方メートルを超える延べ面積でかつ2階以上の建物
・高さ13m以上か軒下9m以上の木造建築物

大人数かつ不特定多数が出入りするような大型の建物は、この資格がなければ設計できません。構造に少しでも欠陥があると、建物の倒壊は免れませんから、丁寧な設計が求められます。病院も安全性が高レベルで満たされている必要があるため構造設計一級建築士が配置されます。

他にもRC造といわれる鉄筋コンクリートを建物内部に埋め込んだ建築方法を用いる際や、延べ面積が1000平方メートルを超える場合、木造建築で高い建物を建てる場合なども構造設計一級建築士が必要です。

構造設計一級建築士の資格を取得するメリット

構造設計一級建築士は少なくとも5年以上の実務経験が必要であるため取得するまで経験値を貯める必要があります。ただこの資格は近年できた資格であるため、資格取得者が少なく、資格を取得すればそれ相応のメリットを享受できます。ここでは構造設計一級建築士の資格をとるメリットについて解説します。

大きな建物に携われる

まず一番の大きなメリットが大きな建物の設計に携われる点です。先程から何度もお伝えしている通り、構造設計一級建築士は大規模な建築物の設計に関係する資格です。そのため、この資格を取得することによって、公共施設や病院、鉄筋コンクリート造の建物、複合施設・商業施設、高層マンションなどさまざまな建設物に関われるようになるでしょう。

引く手数多の存在になれる

また構造設計一級建築士は転職で引く手数多の存在になれます。資格を取得しているだけでも、一級建築士の資格しか持っていない方との差別化になりますが、さらに構造設計一級建築士として大型のショッピングモールや、公共機関の設計を行っていれば、その建物自体があなたの技術や知識レベルを証明するものとなります。一般的な住宅を設計しているだけでは、インパクトが薄いですが、大型ショッピングモールなどの設計に携わっているとなるとインパクトは絶大でしょう。

仕事の信用度UPになる

会社に所属している方だけでなく、フリーとして活躍している方でも構造設計一級建築士は便利な資格です。なぜなら、この資格を取得していることで、他者からの信頼を得られたり、外注される仕事が増えたりするからです。またいろいろな建物の設計に携われることで仕事の幅も広がり、実績を積みやすくもなるでしょう。

構造設計一級建築士の資格を取得するには

構造設計一級建築士の資格を取得するには、5年以上の実務経験が必要です。ここでは構造設計一級建築士の資格を取得する条件や試験内容について解説します。

受験資格

構造設計一級建築士は一級建築士よりレベルが高いですから、構造設計一級建築士を取得するためには、受験資格として「一級建築士」が必要です。また、一級建築士の資格に加えて、5年間の実務経験が求められます。構造設計一級建築士は資格だけでなく、経験的な部分も重要視されるのです。実務経験を積む以上取得までに時間がかかる資格ですが、ここでは構造設計一級建築士を取得する方法を紹介します。

・建築系大学を卒業
・建築系の企業へ入社し、2年の実務経験
・2年の実務経験を経て、一級建築士の資格取得
・5年の実務経験
・構造設計一級建築士の資格取得

このように一級建築士にも実務経験の必要があるため、構造設計一級建築士の資格取得は時間がかかります。上記のように最短で合格できても取得できるのは30歳です。

試験内容

試験内容は法適合確認の分野から記述式で5問、構造設計分野から4枝択一式で20問、記述式で3問出題されます。試験内容は簡単ではなく、平均の合格率は25%程度です。法適合確認と構造設計それぞれで合格・不合格が判定されるため、片方が合格していれば次年度にもう片方を受け直すことも可能です。

まとめ

この記事では聞きなれない「構造設計一級建築士」という資格についてお伝えしました。構造設計一級建築士の資格取得者は大規模な工事には欠かせません。大型ビルやマンション、商業施設やホテルなどの建設、構造設計に携わりたい方にはおすすめの資格です。しかし受験難易度が高く、早くても30歳まではかかるため、一級建築士としてさまざまな建築物を設計し経験を積みながら、少しずつ勉強を進めておくと合格を目指せるでしょう。

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