建築設計業界における主な職種とは?一覧とそれぞれの役割を解説

公開日:2023/10/01   最終更新日:2023/10/24


建築設計業界で思い浮かぶのは、注文住宅やリフォームなどといった施工ではないでしょうか。しかし、建築設計はあらゆる業界は多くの部門で成り立っており、たくさんの職種が存在します。今回は建設設計業界について深く掘り下げて、部門ごとに分けられる職種について役割などを紹介します。

施工管理

施工管理とは現場監督のことをさし、監督業務だけでなく安全管理や工事の進捗度合いの管理を行う職種です。そして書類の作成などのデスクワークも担っています。安全を確保しながらスムーズに工事が進むように、監督や管理を行います。

建設工事

さまざまな建設工事があり、大きく分けると建築(住宅・マンション・ビル・商業施設など)、土木(道路・河川工事・橋・トンネル・上下水道・電力などのインフラ整備)、設備(空調・電機・ガス・給排水・通信機器などの設備設置)の3つにわかれます。

これらをさらに分けると、建築工事、土木工事、電気工事、配管工事、造園工事、電気通信工事、建設機器の施工管理の7つに分けられます。

設計

設計は設計図を作成する仕事であって、意匠設計、構造設計、設備設計の3つに分けられます。図面の作成はCADという設計ソフトを使います。

意匠設計

意匠設計は、建築物のデザインを設計し、美しさや使いやすさなどを考慮します。

構造設計

構造設計は、安全に使用できるように安全性や耐震性などを確保して基礎などを設計します。

設備設計

設備設計は、電気、ガス、水道、空調などを安全快適に利用できるように配線などを設計します。

技術

技術部門は、直接工事を手がける職人と技術の提案、新技術の開発などを行う技術開発の2種類あります。

職人

職人は建築業になくてはならない職種で、さまざまな職種があります。技術を持った職人、建物の骨組みや下地などを作る大工、建具を作ったり設置したりする建具職人、高所で工事を行うとび職人、鉄筋を組む鉄筋工、建物の外壁内壁などを塗る左官工、建物の内装を工事する内装工、防水工事や外壁を塗料で塗る塗装工、庭を造る庭師、水道管や下水管などを工事する配管工、電気の配線などをする電気工事士、重機の運転士などの職種があります。

技術開発

多種多様の工事のなかには、施工方法が難しいものや特殊な技術や道具が必要なことがあります。そのような現場ごとに適している建築技術を提案して、新しい建築技術を開発しているのが技術開発です。そしてICT化によって建築業界の技術は進んでおり、その技術を伝えていくのも役割のひとつです。

営業

営業は自社の技術を企業へ売り込み、工事の受注を獲得する重要な役割を担っています。入札情報や他社の情報などを調査するのも役割のひとつで、コミュニケーション能力が必要です。

そして建築業界の営業部門は、民間営業と官庁営業にわかれています。民間営業は一般企業や個人を対象としており、マンションの建設計画などを提案します。官庁営業は公共工事を受注するための営業で、入札による仕事発注となるため常に他社の情報などを調査しなければなりません。

事務

建築業界の事務には、一般事務や経理、情報システムなどの職種があります。

一般・管理事務

一般事務は基本的なものは変わりませんが、大きく変わるのは経理処理の方法です。建築業界は取引や工事で動く金額が大きく、建築・建設業務特有の経理処理の方法があります。管理事務の仕事は、工事以外のさまざまな手続きや事務作業を行います。企業の本社や支社で仕事を行うのが基本ですが、大きな建築現場では、事務員を配置して業務の効率化を進めています。

システム情報

建築業界において業務内容のシステム化は進んでおり、社員の情報や経営状態などの情報は社内ネットワークというシステムによって管理されています。このような情報管理や更新作業を行っていますが、システム情報部門が担当する仕事はますます重要度を増します。また独自のシステムを構築している会社も増えつつあり、社内システムの構築や更新、不正アクセスなどに対するセキュリティ管理などもシステム情報部門の仕事です。

建築設計業界の今後

建築業界にはあまり知られていない職種も多くあり、職種と内容を知ることで建築業界への興味もわいてくるかもしれません。それでは今後の建築業界はどうなっていくのでしょうか?

コロナの影響

まず新型コロナウイルによって建設設計業界は、大きな影響を受けました。工事の一時休止を余儀なくされ、多くの現場が閉所されました。そして現場に赴かなければならない仕事以外の設計図の作製や施工図のチェックなどは、在宅勤務となりました。

また在宅勤務によってコミュニケーションが低下し、仕事上のトラブルに発展したりコストがかかったりするなど、近年でも働き方に課題が残っています。

建築設計業界の今後はどうなる?

コロナの影響は残っており、建築設計業界もコロナに合わせた建築設計を考えていかなければなりません。感染症への備えが求められ、コロナ禍でのライフスタイルを踏まえたデザインや環境設計が中心となっていくでしょう。

働き方として在宅勤務は普及し続け、どの業界にも取り入れられていくはずです。自宅の空間が仕事部屋や会議室に使われ、それを踏まえたデザインが必要となってきます。空調などもワン・ウェイ換気による換気方法や、バイオフィリックデザインなどといった感染対策を取り入れた建物が増える可能性もあります。

また仕事の多様化が進み、建築設計業界でも意匠、構造、設備、土木設計士の採用だけでなく、事業分野の拡大にも力を注いでいます。今後コロナがどのような形で影響を及ぼすかは分かりませんが、安定的に企業を経営していくために、建設設計以外のビジネスにも取り組んでいくことが模索されています。

すでに決定されている大きなプロジェクトも進行しているなかで、築50年に届く大型建築物もあり、それらの修繕や維持管理の必要性も増加します。今後建設業の需要はさらに高まっていくため、需要の伸びは大いに期待できるでしょう。ただし、建築設計業界だけにいえることではないですが、人手不足という課題は残ったままで、若者中心に建設業離れという問題は深刻です

建築設計業界のIT化

社会全体にIT化が進むなかで、建築設計業界でもIT化を進めざるを得なくなっています。IT化を進めていけば、データの保存も場所をとらなくなるので、紙媒体の保管場所を確保する必要はなくなります。

今まで現場に赴いて行ってきた業務も、リモートワークで行うのが主流となってきています。IT化によって人手不足が完全に解消されることはありませんが、業務の効率がアップするのは確かです。IT化以外にも労働環境や給与水準の向上も人手不足を解消するには効果的で、かつての業務形態に固執しないことが有効なのかもしれません。これからもIT化を進めることで、建築設計業界はさらなる飛躍が期待できるでしょう。

まとめ

建築設計業界における主な職種と役割を解説してきました。思っていた以上に職種が多く、あらためて建築業というものが理解できたかもしれません。そして浮き彫りになったのは、やはりコロナの影響が大きいということです。どの業界にも影響を及ぼしているコロナは、未だに終息したとはいえない状況にあります。

そして若者の建築業界離れによって、人手不足というのも加速しています。有効な手段がないなかで、IT化を進める業界が増え、業務形態も変化しつつあります。これからの建設設計業界も大いにIT化を進め、時代にあった取り組みが求められています。

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