設計士と建築士の仕事はどう違う?資格や年収などの違いを比較!

公開日:2022/07/01   最終更新日:2022/07/26


建築設計は建物の外観デザインや設備の使い勝手のよさ、快適性や安全性など、建造物の個性を形にする大切な仕事です。設計担当者の腕によって、センスのよさや機能性に開きが生じるので、責任は重大ながらもやりがいのある仕事です。建築業界で設計を担当するのは建築士と設計士です。今回は両者の仕事内容や資格、年収の違いなどを比較します。

設計士ってどんな仕事?

設計士というのは名前の通り、設計を行う人をさします。実は設計士には明確な定義がなく、設計士になるための資格制度も存在しません。そのため設計に携わる業務を行っていれば設計士ということになります。乗り物や精密機器の開発など、ある目的を具体化するために制作計画の図面を引いたり計算したりする作業を担当すれば、設計士となります。建築業界に限定した場合の設計士の主な仕事は3つです。

1つめは100平方メートル未満の木造住宅の設計です。建物の設計を行う際には、取り扱う建物の大きさに合わせて資格が必要となります。ただし、延べ面積100平方メートル未満の木造建築物の設計は資格がなくても、誰でも設計が可能です。そのため、資格を持たない設計士でも設計ができます。ただし、設計するにあたっては建築基準法やそれに付随する告知、および条例などを遵守する必要があります。そのため、設計作業に当たっては専門知識を有する設計士が担うことになるのです。

2つめの仕事は建築士のサポートです。設計士の業務範囲は限られているため、資格が必要となるような規模の大きい建物の設計については補助や雑務でサポートすることになります。補助設計であっても、建物の外観の意匠性などにセンスや個性を活かすことができるので、やりがいのある仕事です。

3つめの仕事はお客さんへのヒアリングや各種手続きに必要な書類作成です。建物建築でもっとも大切なのは、クライアントの描く建築イメージを正しく受け取り、形にすること。打ち合わせに参加して、相手の要望や理想を汲み取り、イメージ共有を図るための段取りを行うことは、設計を円滑に進めるために欠かせない仕事です。設計士は建築資格を持っていないため、担当できる作業は限定的となっています。

とはいえ、建物づくりに根幹から関わることができ、お客さんの需要や傾向を分析したり建築設計の技術を高めたり、知見を得たりできる魅力があります。ゆくゆくは建築士としてステップアップを目指す場合にも、実務経験を積みながら自身をスキルアップできるというメリットのある役どころです。

建築士ってどんな仕事?

建築士の仕事は2つあります。建築物の設計図をつくることと、その設計図をもとに建築現場で作業を指揮・監督すること(工事管理)です。クライアントの建築イメージを上手にヒアリングし、要望やこだわりを与えられた土地の中で具現化することが求められる仕事です。設計図を作る際には、クライアントの望むデザインや設備の配置を実現しながら、法律で定められている建築基準法に従って建物の耐震性や安全性を確保する必要があります。

建物の構造、設備、意匠のすべての角度から総合的に設計することが求められます。工事管理業務は設計図通りに工事が進んでいるかの確認を行い、建築物の依頼主への進捗報告や現場の職人への適切な指示だしを行うのです。ほかにも建築士の仕事として、建築許可や道路の使用許可など役所への申請手続きなどを行うこともあります。建築士が担当する仕事の幅はとても広いため、すべてを一人で取り仕切るのは困難です。設計だけを担当する人や、現場管理だけを担当する人も存在します。

建築士になるためには、建築士の国家試験に合格する必要があります。建築士の資格を持つことで、大規模な建築物の設計・管理ができるようになるのです。国家資格は一級、二級、木造の三種類が存在し、資格の種類によって扱える建物の範囲が変わります。一級建築士は延べ面積が500平方メートルを超える大型商業施設や病院、学校、住宅、オフィスビルなど設計・工事管理できる建物に制限がありません。

二級建築士は“高さ13mかつ軒高9m以下”など制限を受けた範囲内で、一般住宅などの小規模な建築物の設計・工事管理ができます。木造建築史は二級建築士よりもさらに小規模で、かつ木造の建物のみ設計・工事管理ができます。具体的な扱える建物の範囲は1階もしくは2階建てで、延べ面積が300平方メートル以下という条件がつくのです。

一級建築士は建設業界の難関資格で、合格率は10%程度です。資格の取得難易度が高いほど収入が期待できるので、若いうちから一級建築士の資格を取得することをおすすめします。一級建築士の資格取得試験を受けるには、四年制大学の建築学科を卒業し、2年以上の実務経験を積む必要があります。また、短期大学の建築学科を卒業した場合は4年の実務経験を積む必要があるのです。

いずれのルートでも大学在学中に建築士法で定められる指定科目を収めることが必須条件で、最短で6年かかります。

設計士と建築士で年収や待遇に違いはある?

設計士と建築士のそれぞれの仕事は既に説明したとおりです。両者の明確な違いは資格の有無です。設計士には資格が要らず、建築士は国家資格が必要となります。資格があるので給与には資格手当の支給も受けることができます。

続いて、設計士と建築士の年収の違いを比較してみましょう。建築士の場合、得られる年収は取得している資格によって変わります。木造建築士よりは二級建築士、二級建築士よりは一級建築士というように、資格の取得難易度が高いほど年収が高くなっています。

建築士の場合、年齢や性別によっても年収が変わります。厚生労働省が2019年に実施した統計調査によると、一級建築士の平均年収は全体で702万円、男性は718万円、女性は607万円でした。2020年の日本人の年収の中央値が約399万円、平均年収が約433万円であることを考えると、建築士の年収は高水準にあります。

ただし、年齢や経験、就職先などによって年収額は大きく異なることを留意しておく必要があります。たとえば、就職先の従業員の人数が100人未満の小規模な企業では平均年収が576万円、従業員の人数が1,000人以上の大規模な企業では平均年収が900万円というデータもあるのです。就職先の企業の業務が下請けばかりだと、業績を上げるのが難しく、年収も低く抑えられがちになってしまいます。

年収の高い一級建築士を目指す際には、大手設計事務所やゼネコンなど大規模な会社に入社することが近道です。規模の大きい会社であれば扱うプロジェクトの規模が大きいので売り上げも大きく、高収入が期待できます。また、実績を上げやすく、自身の価値を上げることができます。取引先が多い企業であれば、将来独立する場合にもツテやコネで仕事を得やすいといったメリットがあるのです。

対する設計士の年収ですが、充分な情報がないため、推定額となります。二級建築士の年収を目安に想定すると、平均350万円前後と想定されます。一級建築士と設計士で比較した場合、平均年収には倍の差があることになるのです。

 

設計士と建築士の仕事の違いを、資格や年収の違いなどから比較しました。設計士の仕事に就くにはとくに資格が必要なく、一方の建築士は国家資格を必要とします。その分建築士の方が高い年収を期待できます。建築士の収入は、年齢や性別、就職先の地域や国家資格の種類によって変わるのです。もっとも高収入が見込める一級建築士は、合格率10%と難易度が高い資格です。資格を得るためには、建築士法で定められる指定科目を学ぶことと実務経験を経ることが必須となり、最短でも6年かかります。

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