建築業のIT化は遅れがち?IT化促進のメリットを紹介

公開日:2024/09/15  

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オフィスワークやサービス業など、各産業のIT化が進むなか、建設業のITへの移行はとくに遅れがちとされています。また、IT技術を業務に導入しても、効果が実感できない、うまく活用できないと悩む建設会社も多いです。そこで今回は、建設業のIT化に遅れがみられる原因や、IT化を進めるメリットについて紹介します。

建築業のIT化が遅れている理由

建設業界におけるIT化の遅れには、いくつかの理由があります。順番に見ていきましょう。

アナログで成り立つ業務が多い

まず、アナログで成り立つ業務が多い点が挙げられます。

建設業では、図面や資料の管理が主に紙媒体でおこなわれています。資材の発注や契約書の作成もExcelを用い、FAXやメールでのやり取りが一般的です。

さらに、ひとつの現場に複数の企業が関与するため、情報共有や管理が複雑化し、大量のアナログ業務のIT化が現場の混乱を招くリスクとなっています。

ITが苦手な人材が多い

ITが苦手な人材が多い点も要因として挙げられます。

建設業界では高齢化が進んでおり、55歳以上の人材が全体の35.5%を占める状況です。高齢化により、デジタル技術に馴染みのない人材が多く、新しいシステムやテクノロジーの導入に対する抵抗感が生じています。

また、長年の経験にもとづくアナログ業務の実績を維持しようとする意識も働いているのです。

現場での変更が多い

現場での変更が多い特徴もIT化の障害です。

建設プロジェクトでは設計図の変更や修正が頻繁に発生し、変更にともなうデータの更新や調整が迅速に求められます。しかし、現場での急な変更に対応するためのITシステムやプロセスが整備されていない場合、業務の効率性や正確性に影響を与える可能性があります。

建築業のIT化を推進するメリット

建築業界のIT化により得られるメリットは多岐にわたります。

IT化を推進するメリットを具体的に8つ紹介しましょう。

現場へ行くときに携行品が少なくて済む

建築業界がIT化する最初のメリットは、携行品の削減です。

従来、現場で必要な図面や写真などの資料は紙媒体でもち運ぶ必要がありましたが、IT化によりタブレットやスマートフォンでデジタル管理できるため、現場にもち込む物品が減ります。作業効率が向上し、ヒューマンエラーも減少します。

資料整理が効率的にできる

IT化によって、図面や必要なデータをクラウド上で管理できます。

どの資料がどこにあるのか迅速に把握できるため、作業の優先順位をスムーズに決められます。とくに現場監督や管理者にとっては、業務全体の効率化が図れるでしょう。

情報の共有が容易

建築プロジェクトでは、さまざまなステークホルダーと情報を共有する必要があります。

必要な写真や図面をデータ化し、クラウド上で共有できるため、コミュニケーションの円滑化が可能です。ミスや誤解を減らし、プロジェクトの進行をスムーズにできます。

施工や品質の向上

正確な図面やデータの使用で施工の精度が向上します。

また、データ分析を通じて、工事の進行状況や品質管理をリアルタイムで把握可能です。必要な調整を迅速におこなえるため、品質の安定化が期待できます。

用紙やインク代の削減

紙媒体の使用を減らし、図面や記録のデジタル化により印刷コストを削減できます。

大量の図面や文書を印刷する必要がなくなるため、環境に配慮した経営が実現可能です。

安全面の改善

建設現場に監視カメラやセンサーを設置し、データの収集・分析ができます。

AIを活用して、作業環境や労働者の安全をモニタリングし、事故のリスクの予測が可能です。安全管理を強化し、労働環境の改善に寄与します。

移動時間の削減

関係者や現場監督が集まって会議をする際の、移動時間やコストを削減可能です。

ビデオ会議やオンライン共有ツールの使用は、リアルタイムでの情報共有ができ、意思決定プロセスが迅速化します。

人手不足の解消

作業に必要なデータのデジタル化により、労働者の負担を軽減できます。

現場での効率化が図れ、休日出勤や過重労働の削減につながります。また、若年層や新しい技術への抵抗感が少ない人材を引き寄せる、魅力的な環境の実現が可能です。

IT化を促進する方法を紹介

建設業のIT化を促進するには、以下の2つのポイントが重要です。

抵抗感を減らす

まず、IT化への抵抗感を減らす対策が挙げられます。

多くの建設業界では、新しいテクノロジーやデジタルツールに対する抵抗感が根強い場合があります。克服するためには、IT化によって具体的にどのようなメリットが得られるのかを明確に説明し、実際の業務効率や品質向上、コスト削減などの成功事例を示す対応が重要です。

また、現場の従業員の声を聞き入れ、ニーズや課題を解決するIT化のアプローチも必要です。

使いやすいツールを選ぶ

使いやすいITツールの選定も肝要です。

従業員が新しいツールを簡単に受け入れ、効果的に使用するためには、使い勝手のよいツールの選択が不可欠です。必要な機能がわかりやすく備わっており、操作が直感的であることが重要です。

従業員がツールの使用方法を学ぶための研修や、問題が発生した際のサポート体制を整える対応も、IT化をスムーズに進めるためには欠かせません。

IT化により活用可能なツール・機械

建築業界のIT化が進むなかで、活用できるさまざまなツールが存在します。

これらのツール使用は、効率化や品質向上、安全管理の強化など多岐にわたる利点をもたらします。以下に、IT化によって活用できる代表的なツールを紹介します。

パソコン

建築業界でのIT化において欠かせないのがパソコンです。

現場の作業所に設置し、ネットワークを通じデータ共有をして、工事に必要な図面やデータの即時閲覧を可能とします。また、インターネットを通じたリサーチや情報収集も容易です。

タブレット

タブレットはもち運びが簡単であるため、現場での作業効率を飛躍的に向上させます。

タブレットを使用した図面の確認や作業工程の管理により、迅速かつ正確な業務の進行を実現できます。また、IT化されたデータのタブレットでの活用は、人手不足の問題への対応にも役立つでしょう。

グリーンサイト

建築現場で必要な労務管理や安全衛生管理において、クラウド上で情報を管理できるグリーンサイトが有用です。作業員の健康状態や資格、許認可証などの管理を効率的におこない、安全性を確保できます。

監視カメラ

監視カメラの導入により、建築現場の安全管理や進捗状況の監視が容易になります。とくにweb活用できる監視カメラの導入で、現場監督者はリアルタイムで作業状況を把握し、必要に応じた迅速な対応を可能とします。

3Dプリンタ

3Dプリンタは建築業界に革新をもたらす技術のひとつです。従来の型枠を使用せずに建材を短時間で製造でき、複雑な形状の部品や試作品を迅速に作成できます。設計の自由度が増し、施工の効率化やコスト削減に貢献します。

ドローン

ドローンは建設現場の監視やデータ収集に革新をもたらします。3Dレーザースキャナーを搭載したドローンの活用で、自動で現場のデータを収集し、建築物の進捗状況を詳細を把握可能です。また、構造物の異常を早期に検知できるため、安全管理の向上につながります。

まとめ

建築業界におけるIT化は遅れがちですが、導入には多くのメリットがあります。デジタル化により、現場での資料のもち運びが不要になり、作業効率が向上するでしょう。図面やデータのクラウド管理により、情報共有が容易になるため、施工精度や品質管理も向上します。さらに、紙媒体の使用を減らすと、コスト削減や環境負荷の低減にも貢献します。IT化は、安全管理の強化や移動時間の削減にも寄与し、建設業界の持続可能な発展に不可欠です。この記事の内容を参考に、IT化を促進し業務効率化の相乗効果として、従業員の豊富な経験や磨かれた技術が発揮できる場をさらに増やしていきましょう。

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