一級建築士になるために必要な技術
建築物を設計して作り上げるには、さまざまな能力を必要とします。そのため、一級建築士として活躍するためには、建築物に強い関心を持つなどの適性が求められます。また、実務経験が求められますが、それは建築士法で規定された業務を一定期間こなさなければなりません。
適性と心構えについて考えてみる
建築というのは理数系や文科系や美術系の力が必要とされ、これらが総合される世界でもあります。美術や芸術が好きな人は設計のデザインに進むことが多く、数学や計算が好きな人であれば建築構造や設備の分野に進む人が多いです。また、都市や社会や法律に関心がある人は建築行政の分野に進む人が少なくありません。
さらに、工事現場で専門工事業者を指揮監督して、建物を完成させる施工の分野に進む人もいます。一級建築士になるために、大学や専門学校などで建築学を学ぶ人がほとんどです。学校で学ぶうちに、自分が建築のどの方面に進んだらよいのかが見えてくるでしょう。
それには自分の関心や興味はもちろんですが、先生による指導の影響によって見えてくることもあります。先生の感化を受けることは建築教育では良くあることで、これまでに一級建築士として活躍している人でも多く見られます。先生と教え子の関係は学校を卒業して社会人になっても続くことが常なので、先生との関係を大切にすることが肝心です。
建築士としての職業における適性や資質は、これから建築の世界を目指す人にはなかなか分からないかもしれません。しかし、過去には適性がないと言われた人が、その道で成功したという事例も少なくありません。
建築士を目指すのであれば、まずは建築の世界に興味をもっていろいろな本を読むことがポイントです。また実際の建築物を見たり人の話を聞いたりして、この世界に進もうという気持ちを持つことが重要かもしれません。つまり、建築の世界に飛び込むなら、まずは技術よりも建築に興味を持つことが大切なのです。建築物に関する本を探したければ、図書館に行けばいろいろな建築案内やガイドブックがあるので参考になるでしょう。
また、市役所や区のホームページなどにも、その地域の有名建築物のことが紹介されていることがあります。例えば銀座や京都などの地域名と、建築ガイドなどのキーワードを入れて検索すれば探すことができます。自分が住んでいる地域の建物についても、建築の観点から見直してみると建築物に対する興味が湧いてきます。自分が住む街についてどのような歴史があり新旧の建築物があるのか、或いは景観は美しいのかそうでないのか、などいろいろなことを調べてくると建築物に対する知識は自ずと増えてくるはずです。
実務経験にはどのようなものがあるか
一級建築士になるためには、学歴と実務経験年数の組み合わせが、条件を満たしているかが必要になってきます。しかしどのコースを選んでも、建築実務経験は必要です。実務経験が必要とされるのは、それだけ建築に関する実務経験が重要視されているこということです。ただ一口に実務経験といっても、どのような経験が必要なのか分からない人も少なくありません。
やはり建築物全体との関わりが少なかったり、建築に関する知識や技術を使わなかったりする業務内容では、実務経験として認められることはないです。実務経験については、建築士法と呼ばれる法律によって定められています。具体的には、設計事務所や建築会社や工務店などで、建築物の設計・工事監理・工事現場での指導監督などをおこなうことが該当します。
また、官公庁などで営繕業務に関わることも、建築に関する実務経験として認められます。ここでいう営繕業務とは、建築物の営造と修繕のことであり、簡単にいえば建物を作ったり直したりすることです。もし、仕事が建築関連以外の業務を含んでいる場合、それを除外した設計や工事監理に関する知識や技術を得られる実務についてのみ、その期間をカウントすることが可能です。
このような業務経験の一部を建築に関する実務経験とするケースでは、業務の内容が個別に審査され、受験資格を満たすか否かが判断されます。そのため、業務経験について添付書類の提出を求められることがあります。虚偽の記載は不正手段とみなされ、処分の対象になってしまいます。
そうならないためにも、実務期間の計算方法に誤りがないように、正確に計算して提出しなければなりません。一級建築士の受験資格としては、大学等の卒業または二級建築士免許登録の日からが、実務経験の期間となります。卒業後から起算されるため、昼間の学校での在学期間は、実務経験としてカウントされないことに注意しなければなりません。例えば、学生が建築事務所でアルバイトをして、社員並みに専門的な仕事をこなしていても、実務経験として数えられないのです。
実務経験中に磨いておきたいこととは
一級建築士になるために建築系の大学等を卒業してから、設計事務所や建築会社や工務店などに就職して実務経験を積む人は多いです。実務経験ではさまざまなことを学ぶことになるでしょう。例えば設計事務所や建築会社などに就職したならば、まずは先輩方についてさまざまな業務に携わります。
そこでは厳しいながらもみっちりと指導を受けることになります。非常に苦痛と感じることもありますが、そこでの経験がのちに一級建築士としてのキャリアの基礎となることは間違いありません。上司や先輩によっては厳しい要求をすることがありますが、そこから学び取ることはかなり多いです。ところで一級建築士に必要なものに、忍耐力と努力が挙げられます。ここでいう忍耐力とは、形のないものから形のあるものにコツコツと作り変えていく能力のことです。
また常識とは、建築物は大金を集めて作り上げるものである、という自覚を持つことです。このような感覚を持つためには、実務経験をこなすことで身につけるしかありません。建築物というのはある種のアートといわれています。しかしアートとの違いは、心ゆくままにお金と時間をかけられないことです。
建築家の感性のままに作っていては、仕事として成り立つことはまずありません。建築物は一般的なアートとは異なるということを認識しながら、仕事に取り組まないといけないのです。また一級建築士の仕事は、単に建築物を設計して作るということにとどまってはなりません。設計は大切な仕事ではありますが、建築士の仕事のうち半分は事務作業に費やされることになります。
何故なら建築は大きなお金が動く仕事であるため、その分事前準備はしっかりおこなわなければならないからです。役所に提出する書類のほか、設計にたどり着くまでに作成する資料はたくさんあります。これらがうまくできなければ、施主との話は進みません。建築士として設計をしたいと思っていても、初めのうちは事務作業からスタートすることが多いです。このような地道な作業を続けて認められたら、ようやく設計の仕事が任されるようになります。
このような意味においても、建築士には技術以外に忍耐力が求められるのです。ところで建築士は1人では仕事はできず、たくさんの人と協力しながら建て主の希望を叶える仕事です。そのためには建て主の要望をいかにうまく聞き出せるかがポイントであり、コミュニケーション技術が求められます。建て主の望んでいることを取りまとめ、計画し図面にしていくためには、その人の人生観や生活スタイルまでを把握する技術が肝心です。
建築の世界で一人前になるためには、いろいろな知識や技術が求められます。そのスタートとなるのは、建築物に対して強い関心を持つことでしょう。それは自分が住んでいる地域の建物で、興味があるものからいろいろと調べてみると良いかもしれません。また、実務経験を積むにあたり、厳しい指導を受けることになりますが、その中から忍耐力や常識を身につけると良いです。
さらには設計の仕事以外にも、膨大な事務仕事をこなさなければなりません。そして、コミュニケーション技術を磨いて、建て主の希望を叶えられる建築家になりましょう。