今の環境で大丈夫?女性建築士が長く仕事を続けてキャリア形成するには
建築業界というと男性のイメージが強いですが、建築士資格保有者の4分の1が女性であることからもわかるように実際は女性も多い職場です。しかし女性は体力面や出産、育児などの理由により前線で働き続けることが難しいというのが現状のようです。ここでは建築業界で女性建築士が長く働き続けるためのキャリアプランについてご説明します。
建築業界で働く女性はキャリアを形成しにくい?
男性のイメージが強い建築業界において女性がキャリアアップすることは難しいのでしょうか。ここでは女性のキャリアアップを考える上で押さえておきたい女性ならではのメリットやデメリット、結婚後の働き方のポイントについて確認しておきましょう。
もくじ
女性ならではのメリット
建築業界ではさまざまなクライアントとのやり取りがありますが、クライアントが女性の場合は男性よりも話しやすいと感じてもらえます。住宅の設計やリフォームなどにおいては女性が主に利用するスペースの相談がしやすく、同様に建築士からの提案も意思疎通がしやすいでしょう。男性に同様の提案ができる場合でも、やはり女性同士の方が共感し合えるという現実があります。
女性ならではのデメリット
建築業界では未だに男性主体の考え方が強く女性が働きにくいと感じるシーンがあります。たとえば建築現場や事務所に女性用のトイレや更衣室がなく、周辺の施設を利用しなければならないといったことも発生します。
また、建築業界は時間外や休日労働が比較的多い職場のため、女性にとっては体力的なハンディキャップもあります。長時間労働に耐えられる体力をつけたり、普段からの健康管理やストレス解消を習慣にしたりすることも必要でしょう。不当に女性の労働環境が悪いという認識があれば、社内外の相談窓口や労働基準監督署に相談することも必要です。
結婚後の働き方について
女性のキャリア形成において大きな転機となる結婚については、その後の働き方についてもパートナーとしっかり話をしておくことが大切です。建築の仕事は現場によって働く場所が変わります。対応エリアが広い大手企業に勤務する場合などは転勤や出張を想定してあらゆるシミュレーションをしておきましょう。
会社の福利厚生についても事前に確認し、内容が充実していない場合には大手への転職も視野に入れて結婚時期も含めた全体的なキャリアプランも検討する方法もあります。大手への転職が難しく一旦離職することも想定するなら、資格の取得が有効です。
建築士だけではなく施工管理技士やCADオペレーターの資格があれば復職しやすく、一時的なテレワークや大手への転職など選択肢が広がります。復職にあたっては正社員としてキャリアアップを目指す以外に、一時的には仕事のレベルや時間に融通がききやすい派遣社員やアルバイトとして働くという方法もあります。
長く仕事を続けるためにはどうすればいいのか
女性が建築士として長く働き続けるのはなかなか難しいという現状がありますが、そんな中でも働きやすい条件や環境をつかむにはどうすればいいのでしょうか。ここでは女性建築士の働き方について、職場選びと仕事内容の2つの視点からご説明します。まずは職場選びについて見ていきましょう。
大手企業への就職
大手企業は産休や育休、保育施設などの福利厚生が充実していて女性へのサポートが手厚い環境が整っています。また、従業員が多いため業務の分担や引継ぎ、職場復帰がしやすいというメリットもあります。その分就職の倍率が高く得意分野や実績が必要となるでしょう。また、業務分担が進んでいるので興味のある仕事に携われる保証がないことも想定しておきましょう。
女性が多い企業への就職
女性が多い企業への就職もおすすめです。女性が多いと大企業のような福利厚生面の充実が期待できることと、女性への理解も深く、女性同士でサポートし合いながら働けるというメリットがあります。女性建築士が多いということ自体女性が活躍しやすいことの証明でもあり、女性が働きやすい環境をみんなで作っていくという意識も強いことが想像できます。
独立開業
女性建築士の中には自分のペースで働くために就職ではなく独立開業を目指すという人もいます。独立開業すれば企業の制約にとらわれず、家庭と仕事の両立をしやすいだけではなく時間の融通が利き、発想の自由度も高くなります。しかし独立後にコンスタントに仕事を得るにはそれなりの経験や人脈、プロモーションのスキルなどが必要ですので、企業に雇われる以上に努力が必要で責任も大きいといえるでしょう。
次に女性のセンスを活かせるポイントについて見ていきましょう。女性建築士の数はまだまだ少ないですが、女性に相談したいというクライアントはたくさんいるので、その要望に答えられる建築士になることはキャリア形成に有利に働くでしょう。
家庭目線への共感
家事や育児、家庭での家族の過ごし方などのライフスタイルに共感し、女性ならではの目線で住宅設計の提案ができます。家庭の仕事もジェンダーレス化が進んでいるとはいえ今のところはまだ女性のイメージが強く、女性建築士のセンスが活かされるでしょう。
女性のクライアントが相談しやすい
女性クライアントにとっては男性建築士相手よりもリラックスできて、話しやすくやり取りがスムーズで要望も伝えやすいでしょう。夫婦揃って建築士と打ち合わせをする際、建築士が男性だと男性同士で話が進みがちですが、女性建築士だと女性の意見を積極的に聞き出してくれそうなイメージもあります。
感覚やイメージの共感
具体的なイメージではなくても、こんな感じ、居心地のいいデザインというような曖昧な提案に対しては女性の方が共感しやすいでしょう。
業界でも女性が長く働ける環境を目指している
近年建築業界で働く女性が増えていることから、業界としても女性が働きやすい環境整備に注力しています。国としても国土交通省などが業界の活性化のために女性の定着促進に向けた計画「建設産業行動計画」を策定しており・働き続けられるための環境整備・女性に選ばれる建設産業・建設産業で働く女性を応援する取り組みの定着という3つの目標が設定されました。ここでは具体的な施策について確認しておきましょう。
女性定着に向けた意識改革
男社会のイメージが根強い中で女性が働きやすい環境を作るには、まず女性が建設業界で働くことへの理解を深めることが重要です。
働きやすい労働環境の整備
女性が「働きたい」と思えるような建築現場の環境整備は不可欠です。トイレや更衣室などのハード面での整備も必須でしょう。国土交通省の直轄工事においては快適トイレの設置が原則化されていますが、民間工事にはまだまだ波及しておらず早急な改善が望まれます。
働きやすさと働き甲斐を感じられる環境整備
女性が建築業界で長く働くためには結婚や出産に伴う環境整備も必要です。復職時に業務負荷の少ない部署へ配置転換するといった配慮や、仕事と育児・介護などと両立するための環境整備は必須といえます。また、男性の育児休暇取得の推進も女性へのサポートに直結している重要な施策といえます。
まとめ
男社会のイメージが根強く女性が働きやすい環境整備はまだまだ道半ばといった建築業界ですが、世の中の流れに呼応して改革は進んでいます。女性建築士として長く働きキャリア形成を考えるにあたっては、業界の動きや各企業の業務内容や社風、福利厚生などを押さえておくと共に、クライアントとの関係性において女性建築士が女性だからこそ優位に立てるポイントを押さえてキャリアを積むことが重要といえるでしょう。