木造建築士とはどんな資格?資格試験の概要と取得方法を解説

公開日:2023/11/15   最終更新日:2023/07/28


一級建築士や二級建築士という資格は知っていても、木造建築士を知っている人は少ないかもしれません。建築設計業界で仕事をしたい人は、関連する資格を取っておくと必ず役立ちます。多くの国家資格があるなかで、木造建築士とはどのような資格なのでしょうか?今回は、木造建築士という資格試験の概要と取得方法を解説します。

木造建築士とは

木造建築士とは国家資格のひとつで、「階数2階建て以下」「延べ床面積300平方メートル以下」の建物設計、工事監理を行うことが可能です。一般的な広さの住宅は130平方メートルほどなので、この範囲の建築物であれば携われます。

そして木造建築物だけの設計や管理など限られているため、鉄筋の大きな建築物などは、木造建築士が扱うことはできません。扱える範囲は少ないですが、一級建築士などよりも取得が、必ずしも簡単であるとはいえません。木造の建築物に関して知識が豊富であるため、規模が大きな建物でなければ、特に問題なく仕事をこなせます。都道府県の知事から認可を受けることで取得が可能となります。

木造建築士の仕事内容

木造建築士は、二級建築士と比べても規模が限定されます。そして規模は限定されても、仕事内容に大きな差はありません。

主な仕事内容は、建築物の計画と設計、依頼主との打ち合わせ、図面の作成、建築確認申請手続き、工事現場の設計監理、変更対応などとなっています。仕事内容の負担は大きい傾向にありますが、身につけられる知識も増えます。

木造建築士の収入

木造建築士の資格保有者を対象としたある求人の統計を見てみると、平均想定年収は約420万円~650万円となっています。もちろん勤める企業の規模などによって異なりますが、これよりもアップになる可能性はあります。

また就職先の幅が広がり、住宅を専門に扱う工務店や木造建築に特化した建設会社の就職などが優位になります。また木造建築士以外の建築関係の資格を取得しておけば、信頼性や専門性が高まり収入アップにつながります。木造建築士の詳細について解説しましたが、専門性の高い木造建築士の資格を持っていれば、転職する際にも役立ちます。

転職先としては、建設会社、リフォーム会社などが挙げられます。できるだけ木造建築士の資格を活かせるような小規模の木造建築物をメインに扱う会社への転職が望ましいです。転職後に二級建築士や一級建築士をめざせばスキルアップとなり、より待遇のよい企業への転職も可能となります。

木造建築士の資格を取得するメリット・デメリット

ここからは、木造建築士の資格を取得するメリット・デメリットを紹介します。

メリット

メリットのひとつは、実務経験だけで資格試験を受験できるので、一級建築士と比べると難易度は低いといえます。加えて、木造建築の専門知識が身に付くことが挙げられます。木造建築士は木造建築が専門なので、木造建築に関する専門的な知識が身に付きやすいです。

そして歴史的な建物は木造建築であることが多いので、木造建築に関する知識を深めたい人にとっては、最適な資格です。近年は日本家屋が見直されており、公共施設にも木造建築物がよく見られます。これからも木造建築士の専門知識は重宝される可能性が高いです。

デメリット

デメリットを考えてみると、木造建築士は木造建築物だけを扱うため、鉄筋造などの規模の大きい建物の建築に携わることができません。つまりキャリアの幅を広げにくいということです。大きな建造物の建築や設計に携わりたいという希望がある人は、ステップアップして一級建築士をめざすことを考えましょう。また収入面においては、あまり期待できません。

木造建築士の資格を取得する方法

次に木造建築士の資格を取得する方法を解説します。

大学や専門学校で学ぶ

大学や専門学校で必要な科目を履修、修了し、受験資格を得ます。試験の合格と実務経験により木造建築士になれます。試験は実務経験がなくても受験できますが、実務経験がないと受験できない場合があります。それは、高卒かつ高校で建築を学び、建築の単位数が15単位以上20単位未満の方、中学校卒業の方(修業年限3年以上の職業訓練校に通っていた方は除く)となります。

また独学で学ぶ人もいますが、効率的に試験対策を進めることは難しいでしょう。学校の試験対策が不十分であったり、不安を感じたりすることがあれば、試験対策講座などを受講するのも賢明な判断です。

建築設備士の資格を持っている場合

建築設備士の資格を持っている人は、試験に合格することで木造建築士になる資格が得られます。試験合格者は建築の単位数や在籍していた過程に応じて、卒業後4年以内の実務経験が必要です。

実務経験により受験する場合

設計図書、施工図などの図書と密接に関わりを持っていて、「建築物全体を取りまとめる」「建築関係法規の整合を確認する」または建築物を調査・評価するような業務に7年以上就いていた人は、木造建築士試験を受験できます。試験をクリアすると木造建築士になれます。建物の設計業務だけでなく、耐震診断や施工管理、建築行政、インターンシップなども実務経験に含まれます。

木造建築士の資格試験の概要

木造建築士の受験資格は、大学や専門学校で建築に関する指定科目を修了している場合、建築実務が7年以上ある場合とされています。

学科と設計製図の試験

木造建築士の試験は年一回行われ、学科試験と設計製図の試験があります。学科試験は4科目を2つの時間帯に分けて実施します。出題数は各科目とも25問で合計100問となり、全問が5肢択一式となっています。設計図の試験は提示された設計条件に基づいて要求図書を作成する試験です。

試験内容は平面図(1階、2階)、基礎伏図、2階床伏図兼1階小屋伏図、2階小屋伏図、軸組図、主要構造部材表(木拾い書)、柱杖図(はしらづえず)または矩計図(かなばかりず)であり、試験時間は5時間です。ちなみに柱杖図とは、敷地地盤調査時における地中深さに対するN値を柱状に書き表した図面のことです。木拾い書とは、設計建物の工事に使われる木材の寸法です。

難易度と合格率

木造建築士の試験は、最初に学科試験が行われ、次に設計製図試験が行われます。学科の合格率は50~60%、設計図試験の合格率は60~70%になっていて、最終の合格率は35%です。難易度は高いと感じますが、基礎知識をしっかり身につけることで、合格する可能性は高くなります。

一級、二級建築士の合格率を見てみると、木造建築士の合格率よりも低い傾向にあります。つまり難易度は高いということなので、独学での試験対策は難しいでしょう。建築士の試験対策は、やはりプロのアドバイスを活用し、試験対策講座を利用することが望ましいです。

まとめ

今回は木造建築士という資格の試験の概要と取得方法を解説しました。木造建築士は聞きなれない資格であり、しごと内容もあまり知られていません。木造建築士の資格を取る難易度は低いとされ、挑戦する人も増えています。

ただし、資格を取る方法を把握しておかなければならず、さまざまな取得方法があります。専門学校や大学に行かなくても、実務経験が7年以上あれば資格試験を受けられます。木造建築士のメリットは資格試験の難易度は低いので、先に取得してのちに一級建築士に挑戦するのがよいかもしれません。デメリットは木造建築物だけを扱うため、鉄筋造などの規模の大きい建物の建築に携われないことです。また収入面においてもあまり期待できないのが、マイナス点です。

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