設計士の就職・転職先には設計事務所以外にどんなところがある?
設計士の就職・転職先として設計事務所が一般的にあげられますが、実はそれだけではありません。ゼネコン、ハウスメーカー、アトリエ事務所など、多様な分野で設計士のスキルは求められています。設計の専門知識を活かせる意外な就職先について詳しく見てみましょう。設計士として就職や転職を検討されている方の参考になれば幸いです。
設計士の仕事内容
建築設計士の主な役割は、建築物の設計図を作成することです。この設計図は建物の形状、構造、機能、美観などを詳細に示し、建設プロジェクトの基礎となります。しかし、設計図を作成するまでの過程には、さまざまな業務が含まれています。
設計士の仕事の流れ
まず、設計士はクライアントの要望をヒアリング。クライアントが希望する建物の用途やデザイン、予算、完成希望時期などを詳細に聞き取り、これを基に初期設計のアイデアを構築します。
次に、施工会社との打ち合わせです。設計士は建物の構造や施工方法について、施工会社と綿密に調整をおこないます。これには、使用する材料や工法の選定、工期のスケジュール調整、コストの見積もりなどが含まれます。
また、建設プロジェクトを進めるには、行政手続きも欠かせません。建設許可を得るためには、地元の建築基準法や規制に基づいた申請書類を作成し、提出する必要があります。
設計図だけでなく、建物の用途、周辺環境への影響、セキュリティや避難計画など、さまざまな要素を考慮する必要があるのです。行政との折衝も重要な業務のひとつであり、正確で迅速な手続きが求められます。
施工が始まると、設計士は現場管理や進行管理業務をおこないます。建設現場では、設計図通りに工事が進行しているかを確認し、問題が発生した場合には迅速に対応する必要があります。
また、施工が適切におこなわれているか、品質が確保されているかもチェック。このように、現場での状況を把握し、プロジェクトを成功に導くための管理能力が求められるのです。
設計士の仕事範囲
設計士の業務は建築士の資格がなくてもおこなえる範囲にとどまることが多く、建築士の補佐的なポジションとして活動することもあります。この場合、設計士はクライアントとの対応や初期の設計業務、事務作業などを担当。
建築士の指示のもとで、設計図の修正や詳細な作図をおこなったり、必要な資料を作成したりすることが求められます。全体として、建築設計士の仕事は設計図の作成にとどまらず、多岐にわたる業務をこなすことが必要です。
設計士としての就職・転職先
建築設計士としてのキャリアを拡大するためには、設計事務所以外にも多くの選択肢があります。各職場ごとに異なる特性や魅力があり、設計士のスキルや興味に応じて適した転職先を選びましょう。以下に、設計士の就職・転職先として考えられる代表的な職場について解説します。
設計事務所
設計事務所は、建築設計士にとってもっとも典型的な就職・転職先です。意匠設計、構造設計、設備設計の専門家が揃っており、店舗、オフィス、ホテル、集合住宅、病院、学校など、さまざまな用途の建物を取り扱っています。
意匠設計では、美しいデザインや機能性を追求し、建物の外観や内装を創造的に設計。構造設計は、建物が安全で頑丈であることを保証するために必要な骨組みを設計し、設備設計は、空調、電気、給排水などのインフラを計画します。
このように多様な建物や設計分野に関わることができるため、広範な経験を積むことができ、スキルアップに繋がるでしょう。
ゼネコン
ゼネコン(ゼネラルコントラクター)では、設計士は施工の実現性を重視した設計をおこないます。コストや施工性といった制約のもとで設計を進めるため、自由なデザインよりも、実際に実現可能で効率的な設計が求められます。
設計士は、同じ会社の施工者と密に協力し、細部まで考え抜いた設計を具現化。制約のなかでいかに高品質な建物を設計できるかが試されるため、挑戦的でありながらも非常にやりがいのある環境です。
ハウスメーカー
ハウスメーカーでは、主に住宅の設計を担当。ハウスメーカーの設計は、決まった規格や標準化されたデザインが多く、自由度は低い傾向にあります。しかし、効率的に多くの住宅を設計し、提供することが求められるため、スピード感を持って作業を進めることが可能。
規格住宅の設計が中心であるため、細部にわたる標準化された設計を短期間で完成させるスキルが養われます。また、住宅市場の動向や顧客のニーズを迅速に反映させることができるため、マーケットに対応した設計力を磨くことができるでしょう。
アトリエ事務所
アトリエ事務所は、個性的で独自のデザインを追求する環境が整っています。著名な建築家がトップに立っていることが多く、その建築家のもとで設計士が腕を磨きます。クライアントは、その建築家のデザイン性を求めて依頼することが多く、その結果、デザインを優先して設計をおこなうことができるでしょう。
クリエイティブな表現力を発揮し、独自のデザイン理念を持つ建築家の元で働くことにより、個性的で革新的な設計を学び、経験を積むことが可能。また、自身が憧れる建築家の事務所で働くことで、特定のデザインスタイルや哲学を深く学ぶ機会にも恵まれます。
スキルアップするためには
設計士としてのスキルアップには、設計能力とコミュニケーション能力の向上が不可欠です。さらに、建築士の資格取得を目指すこともおすすめ。設計士としてのキャリアを確実にステップアップさせることができます。以下で詳しくみていきましょう。
設計能力の向上
設計能力は、建築設計士としての基盤であり、プロジェクトの成功に直結する重要なスキルです。この能力を向上させるためには、まず設計の基礎をしっかりと理解し、さまざまな建築物や設計手法について幅広く学ぶことが必要です。
設計能力を向上させる効果的な方法は、実際のプロジェクトに携わること。設計事務所やゼネコンで働きながら、多様なプロジェクトに参加することで、設計の実務経験を積みましょう。
コミュニケーション能力の向上
設計士は、クライアントや施工会社、行政機関など、多くの関係者と協力してプロジェクトを進めるため、優れたコミュニケーション能力が求められます。クライアントの要望を正確に聞き取り、それを設計に反映させることは、プロジェクトの成功に欠かせません。
クライアントとの対話を通じて、彼らのニーズや期待を深く理解し、それに応じた提案をおこなうことで、信頼関係を築くことができます。また、設計のプロセスや選択肢を分かりやすく説明し、クライアントが納得しやすい形で意思決定をサポートすることも重要です。
加えて、ほかの設計者やエンジニア、施工管理者と協力してプロジェクトを進めることが多いため、チームワークのスキルも求められます。異なる専門知識を持つメンバーと円滑にコミュニケーションを取り、協力して問題解決にあたることが重要です。
一級建築士を目指す
設計士としてさらに専門性を高め、キャリアアップを図るためには、一級建築士の資格取得が有力な選択肢です。一級建築士は国家資格であり、高度な専門知識と実務経験が要求されます。この資格を取得することで、より大規模かつ複雑なプロジェクトを担当することが可能となり、設計士としての市場価値が大きく向上するでしょう。
一級建築士の受験資格を得るためには、少なくとも2年以上の実務経験が必要です。そのため、設計士として働きながら実務経験を積み、実践的なスキルを身につけることが求められます。
まとめ
建築設計士として成功するためには、多岐にわたる業務に対応できる設計能力と優れたコミュニケーション能力が不可欠です。設計事務所やゼネコン、ハウスメーカー、アトリエ事務所など、多様な就職・転職先を検討し、実務経験を積むことが重要です。さらに、スキルアップを目指し、一級建築士の資格取得に挑戦することで、設計士としてのキャリアをより高め、幅広いプロジェクトに対応できる実力を培いましょう。