リノベーションとリフォームの違いとは?
建設設計に携わっている人でもリノベーションとリフォームの違いが明確に理解できていないことがよくあります。
具体的にどのような違いがあるのかを理解しておくのはプロとして欠かせません。
これからキャリア構築をしていく上でどちらのほうがより好ましいのかを自分なりに判断し、転職するときの検討材料にしてみましょう。
まずはどちらにも共通している点を理解しよう
建築設計の担い手として働いているとリノベーションとリフォームのどちらのサービスもおこなっている企業が多いのもよく知っているでしょう。これは実際におこなわなければならない業務として類似点が多く、技術的にも同じものが求められているケースが多いからです。
そのため、まずは共通点を理解し、一方の業務に携わって習得したスキルが他方にも生かせるという認識を持っておいたほうが良いと言えます。この二つに共通しているのは居住用の一戸建て住宅やマンション、事業用のビルなどの建物に対して適切な工事をすることで状況を改善するということです。
外壁の劣化が目立つようになってきたから補修をして塗装し直すことにより耐久性を高めるというのはどちらの場合にもよく行われます。また、耐震補強工事をして震災に備えたり、防水工事をして雨漏りなどに対策したりするのも共通点です。
このような大規模な工事をするだけでなく、簡単な施工をすることによってより良い環境を整えることもよくあります。住宅の場合には壁紙の張り替えをしたり、キッチン台や洗面台やトイレなどの入れ替えをしたりするケースは多いでしょう。
また、オフィスの場合にはフロアタイルを刷新する工事や、窓のサッシのメンテナンス、鍵の交換などをおこなうこともあります。このように施工内容としてはかなり共通点も多くなっています。基本的にはその工事をおこなうことによって、工事前に比べて使い勝手の良さや住みやすさが向上させられるのが特徴です。
目標地点が違うことを理解しよう
施工内容はかなり似ている部分があっても目標地点には大きな違いがあります。リフォームの場合には新築当初の状況に限りなく近い建物に戻すことが目指されるのに対し、リノベーションでは新築時点よりもさらに優良な建物にすることが目指されるのが特色です。
具体的に施工内容に応じて分類してみると違いがわかりやすいでしょう。リフォームの例をまずは確認してみましょう。
壁紙が劣化してしまったので新築当時に使っていたのと同じような壁紙に張り替えるというのが代表的です。屋根瓦が壊れてきてしまったので交換する、外壁の塗装が剥げてきたので塗りなおしをする、エクステリアのデッキが汚損してしまったので元通りに作り直すといったものも該当します。
また、畳を元通りにするために張り替える、トイレの便器が壊れてしまったから同じような便器を購入して交換する、シャワーの水が出にくくなってしまったので配管やシャワーの交換や清掃をするというのも典型例です。
一方、同じような問題を解決するために施工を依頼した場合にもリノベーションになることがあります。壁紙が劣化してきたから張り替えたいというときに、遮熱性のある壁紙を使ってより住み心地の良い家にしようという場合にはリノベーションです。
屋根瓦が壊れてしまったから、これからの住みやすさを考えると屋根そのものを交換してしまって断熱性を上げようというのもリノベーションになります。外壁塗装をする場合にも今までよりも機能性の高いものを使うとリフォームではないと位置づけられるのが一般的です。
畳をなくしてフローリングにする、トイレの便器をより高性能なものに交換する、シャワーが出にくくなったから最新のシャワー設備を導入するといったものも同様です。もともと建物に備えられていたものに比べて使い勝手が良いものを取り入れて魅力的な環境を整えるとリノベーションになります。
この他にもさまざまな例があるのでもう少し具体的なケースを見て比較してみましょう。より住みやすい住宅にしようと考えたときに間取りを変更しようというケースがあるでしょう。
壁を取り払って二つの部屋をつなげてしまったり、逆に間切りをして部屋を二つにする施工事例は少なくありません。これはもともと新築の時点で持っていなかった魅力を付与するものなのでリノベーションになるのです。
しかし、間切りにしていたパーティションが壊れてしまったから元に戻すという場合にはリフォームとして位置づけられます。エクステリアを充実させたいと思っておこなう外構工事についても同じような事例がたくさんあります。
あまりに手入れをしていなかったためにみすぼらしくなってしまったから元に戻すという場合にはリフォームですが、より快適にエクステリアを使えるようにするためにウッドデッキを導入する、あるいはバーベキューができるような設備を整えるといった場合にはリノベーションになるのです。
このようにどのような目標を持って工事をするかによってどちらに分類されるかが異なるのです。建築設計に関わっていく上では誤解を招かないためにも正しく使い分けることが重要になります。
違いを考慮してキャリアを構築しよう
建築設計の担い手としてどちらも担当していくことができますが、施工内容の違いがあることから自分のキャリアを考えていく上ではどちらを選択したほうが良いのかを十分に検討するのが大切です。不満を抱えている人に対して最低限の施工内容を提案して実施していきたいか、もっと使い勝手の良い建物にしたいというニーズに応えるために最良のプランを提示していきたいかという点が大きな分かれ目になるでしょう。
現場によってどちらをより重視しているかが異なり、顧客から依頼される内容も違ってくるため、自分の考え方に合っている事業を展開している企業を選んで働くのが賢明です。今の職場では業務内容に不満を持っているというときには転職を検討してみたほうが良いでしょう。
ただ、転職先でも同じような業務にしか携われないというケースもあるので選び方には慎重にならなければなりません。対外的にはどちらも担っていると示している企業が多いので、どこに転職したら自分の好みに合っている仕事ができるかを判断するのは容易ではないのが事実です。
この対策として検討したほうが良いのが転職エージェントに登録して相談しながら転職先を見つけ出すという方法です。転職エージェントは個々の企業に出入りして徹底したヒアリングをしているため、基本的にどちらを優先しているかを把握しています。
そのため、自分がどのようにして建築設計に携わっていきたいかに応じて企業からの求人を適切に選び出してくれるのです。また、どちらのほうが自分に合っているかがわからないという場合にも具体的なケースを挙げてディスカッションをおこない、適性を判断してもらうこともできます。
これからより良い形でキャリア形成をしていくためにも、転職したほうが良いのではないかと思い始めたときには転職エージェントを活用してみましょう。
このようにリノベーションとリフォームは建物の改善をするという点では同じですが、目標としている地点が違うので必要とされる施工内容も違うのが一般的です。
建築設計を担っていく上で自分にとってどちらのほうがやりがいがあるかをよく考え、これからのキャリア構築に生かしていくのが良いでしょう。
転職してキャリアを作り上げていきたいと思ったら転職エージェントに相談し、本当にやりたい業務を担当できる職場を見つけ出すのが賢い方法です。